バーベキューに秘密がある
演奏の合間の休憩時間にE氏を捕まえて、「現場従業員の日々の葛藤や、会社と従業員に寄せる社長の思いを歌で共有するという、ライブセミナーの真髄を実感させてもらっています」と話しかけました。すると彼からは意外な答えが返ってきたのです。
「いやいや大関さん、それももちろんですが、一番のポイントはそこちゃいますよ。この後のバーベキューにその秘密の一端がありますよってに、よく見とってくださいね」
バーベキュー? ほどなく、その意図がよく分からないまま始まったバーベキューは、一見なんの変哲もないものでした。しかしよくよく見ると、その場を仕切っているのは全てS社の社員の皆さん。普段は工場で働く皆さんが喜々として、素材を用意し、配置し、焼き、配膳し、来場者を接待しているのです。
聞けば、バーベキューだけでなく工場の事前清掃も、会場設営などの準備も、集客も、受付も、当日の運営までもすべて社員の皆さんが主体的に進めてきたのだと。なるほど、このライブセミナーの真の主役は実は彼ら従業員であり、E氏のライブセミナーのコンセプトは、「ものづくりの現場にもっと活気とエネルギーを」だったのです。
「S社長は昨年社長に就任した三代目。企業も90年続くとやはり刺激がのうなってきます。しかも技術系は普段外部との接点が乏しいよってに、沈滞ムードになりがちなんですわ。三代目は自分の代で会社が下向きになったらアカン、現場のムードを変えなアカンと思って相談に来てくれました。セミナーの肝は歌だけやない、工場にぎょうさん人呼んでスタッフ全員でおもてなしすることで、ものづくりの現場力が一層大きくなるですわ」