完全さ求め過ぎもいかがなもの エントリーシートの罠

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   今日のテーマは「エントリーシートの罠」です。

   今年の採用(2017年卒採用)では、総合商社をはじめエントリーシートの締め切りがゴールデンウィーク前後に集中しています。そのせいか、エントリーシートについての質問をよく受けます。そこで、学生がよく引っかかる罠を3点にまとめました。

罠その1=準備に手間どり時間に遅れる

罠にかからないように慎重に
罠にかからないように慎重に

   エントリーシートでもっとも大事なのは時間(締め切り)です。締め切りを過ぎれば、受け取ってもらえません。とにかく締め切り前に提出することが大事。

   という話をすると、就活生の読者は、「何を当たり前のことを」と、怒り出すかもしれません。ま、怒る前に、なぜ提出がギリギリになってしまうのか、考えてみましょう。

   どう書き分けようかと悩み、準備にやたらと時間をかけてしまう。そうこうするうちに遅れてしまう学生が続出します。

   エントリーシートは就活のための提出書類ですから、準備に時間をかけるのは当然です。だからと言って時間をかけすぎると、そのぶん他の準備ができなくなってしまいます。

   特に自己PRやガクチカ(学生時代に頑張ったこと)は、まず自分で定型を作って、あとは量産していくほうがはるかに楽。各社が求めている設問がちょっとずつ違うとはいえ、あまりにも凝った答えを出そうとするあまり空回りする学生が多すぎる印象です。

罠その2=前提条件の曖昧さに気づかない

   大学受験と就活が決定的に異なるのは、前提条件です。

   大学受験では、前提条件を受験生が変えることはできません。しかし、就活だと、ある程度、変えてしまうことが可能です。

   たとえば、受験の国語・現代文。「主人公の心境にもっとも近い選択肢を選びなさい」という設問であれば、主人公の心境が表れている部分を本文から探しだし、それにもっとも近い選択肢を選ぶことが前提条件です。

   では、就活ではどうでしょうか。

   「あなたは○○で、どのように成長し、どのような夢を実現したいですか」

   これは、今年(2017年卒採用)実際に出された○○という商社の設問の一つ。設問はこれだけです。

   この問いについて、複数の学生から質問が来ました。

   「この商社の事業などを答えに盛り込んだ方がいいですか?」

   こういう質問をしてくる、ということは、罠にまんまと引っかかっていると見ていいです。

   答えは簡単で、「どっちでもよい」。自分の気になる事業や部署があって、そこで働きたい、ということであればそれを書いてもいいでしょう。もしも、うまく書く自信がないなら、その商社とは無関係な自己PRだけでも構いません。「信頼される社会人になっていたい」などでもOK。

   この商社の設問のように、前提条件をはっきりさせない問いがエントリーシートでも面接やグループディスカッションでも多数あります。そこには、学生が前提条件の曖昧さを受け止め、自分の回答をどう組み立てるか、それを見てみたい、という意図があります。もちろん、そこまで深くは考えず、好きに答えてほしい、という企業もあります。

   企業側の意図はどうあれ、前提条件が曖昧なら、どのように回答を作っていくか、そこが腕の見せどころとなります。

罠その3=設問の指示に正しく答えていない

   罠というよりは学生側が勝手に自滅しているだけ、と言えるかもしれません。どういうことかと言えば、設問にきちんと答えていないケースです。

   たとえば、次のような設問。

   1:「周囲と協力して目的を達成する過程において、あなたがとった具体的な行動を記述してください」

   2:「自分自身や所属組織に変化が必要だと感じたことはありますか? その理由とあなたがとった行動を具体的に記述してください」

   どちらも、どうとでも取れる設問です。しかし、よくよく読むと、設問の指示は微妙に異なります。

   設問1は、「周囲と協力して目的を達成する過程」とあります。ということは、素直に「サークル(あるいはアルバイトでもゼミでも何でもよい)を頑張ってきた」でいいでしょう。

   ところが、設問2には「変化」というキーワードがあり、「その理由」を書け、との指示。

   ですから、設問1と同じ「サークルを頑張ってきた」ではダメで、なぜ変化が必要だと思ったのか、その理由を書く必要があります。

   また、設問2には「自分自身や所属組織」とあります。サークルやゼミ、アルバイトなどで書くネタがなければ、自分を変えようと思った、という話でも問題ありません。一方、設問1には「周囲と~」とあります。ということは、自分ひとりだけの話ではアウト。周囲と、つまり、サークルでもゼミでもアルバイトでも何でもいいですが、他の人と一緒に活動した話にする必要があります。

   このように指示を無視して、指示に答えていない、というエントリーシートが多数見受けられます。

   それでは、罠にかからないためには、どうすればいいのでしょうか。

   罠その1の「時間」と罠その2の「前提条件」については、まあ、意識を変えてください、としか言いようがありません。

   罠その3の「設問の指示」については、就職課の職員でもカウンセラーでもいいですし、友人でもいいので、第三者に聞いてみましょう。就活の結果が直接影響する本人に設問の指示が見えなくても、冷静な人が見ればあっさりわかることがほとんどです。

   結局のところ、エントリーシートは完全さを追い求めると泥沼に陥ります。ある程度は割り切って量産していくのが一番。

   納得できないという方は、ウインストン・チャーチルの名言を2本どうぞ。(石渡嶺司)

   「不利は一方の側にだけあるものではない」

   「完全主義では、何もできない」

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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