完全さ求め過ぎもいかがなもの エントリーシートの罠

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罠その2=前提条件の曖昧さに気づかない

   大学受験と就活が決定的に異なるのは、前提条件です。

   大学受験では、前提条件を受験生が変えることはできません。しかし、就活だと、ある程度、変えてしまうことが可能です。

   たとえば、受験の国語・現代文。「主人公の心境にもっとも近い選択肢を選びなさい」という設問であれば、主人公の心境が表れている部分を本文から探しだし、それにもっとも近い選択肢を選ぶことが前提条件です。

   では、就活ではどうでしょうか。

   「あなたは○○で、どのように成長し、どのような夢を実現したいですか」

   これは、今年(2017年卒採用)実際に出された○○という商社の設問の一つ。設問はこれだけです。

   この問いについて、複数の学生から質問が来ました。

   「この商社の事業などを答えに盛り込んだ方がいいですか?」

   こういう質問をしてくる、ということは、罠にまんまと引っかかっていると見ていいです。

   答えは簡単で、「どっちでもよい」。自分の気になる事業や部署があって、そこで働きたい、ということであればそれを書いてもいいでしょう。もしも、うまく書く自信がないなら、その商社とは無関係な自己PRだけでも構いません。「信頼される社会人になっていたい」などでもOK。

   この商社の設問のように、前提条件をはっきりさせない問いがエントリーシートでも面接やグループディスカッションでも多数あります。そこには、学生が前提条件の曖昧さを受け止め、自分の回答をどう組み立てるか、それを見てみたい、という意図があります。もちろん、そこまで深くは考えず、好きに答えてほしい、という企業もあります。

   企業側の意図はどうあれ、前提条件が曖昧なら、どのように回答を作っていくか、そこが腕の見せどころとなります。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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