日本に一時帰国しました。帰って来るたびに外国人観光客が増えていることを実感します。
日本は、物によって物価が安いので、今回、食料品やカミさんの化粧品を3万円くらい買いましたが、レジで我々の前に並んでいた中国人旅行者は1会計で10万円以上買っており、桁の違いを見せつけられました。
そんなわけで、日本では、外国人観光客にサービスを提供しているような所をいくつか見て回り、一番面白かったのが東京・お台場にある「大江戸温泉物語」でした。
外国人が喜びそうなポイント満載
大江戸温泉物語とは、日本全国に温泉宿(「ホテルニュー塩原」や「鬼怒川観光ホテル」など30以上)を展開する会社が作った日帰り温泉施設です(実は宿泊もできます)。「タイムスリップ」をテーマに、古き良き日本の温泉を楽しめるようになっているのですが、そのコンセプトが外国人観光客に見事ヒットし、大人気スポットになっています。その外国人率50%以上!
実際に足を運んでみると、外国人観光客が喜びそうなポイントがふんだんにありました。たとえば、
入館してすぐ、いろいろな柄の中から選べる浴衣
ヨーヨーすくい、わたあめ、型抜き、忍者手裏剣投げなど、いろいろ揃った縁日遊び
寿司、ラーメン、天ぷらなどなど、外国人に馴染みのある日本食レストラン
それらが「外国人がイメージする日本」の風景の中に雑多に並んでいるのです。
温泉自体は、各地にあるスーパー銭湯と大差ありません。しかし、このような「日本風」な仕掛けと、外に浴衣を着たまま入れる足湯があることで、外国人観光客を呼び込む場所になっているのです。
なるべく日本っぽいところで
一般のスーパー銭湯は、湯を楽しむという点では非常に優れているのですが、ひとつ大きな弱点があります。いい写真が撮れないのです。
今どきの旅行客が楽しみを感じるかどうかのポイントとして欠かせない要素は、自分たちが楽しんでいるところを写真に撮り、FacebookやInstagramなどのSNSにアップできることです。日本に旅行したら、なるべく日本っぽいところで、日本っぽい格好をして写真を撮るのがベストです。
自分の好みで選んだ浴衣を着て、縁日の遊びに興じ、日本庭園っぽい足湯で憩う、そんなようすを撮った写真は、誰が見ても日本旅行をエンジョイしている自分です。それらの写真には、みんなに見せびらかしたくてしょうがなくなる魔力があるのです。さらには、その写真を母国で見た友人たちはうらやましくなり、「自分も将来日本に行ったら、ぜひそこに行きたい!」という話になるわけです。
大江戸温泉物語は、風呂の入り方などの案内に関しても、日本語のほか、英語、中国語、韓国語での表示もしており、イラスト入りでわかりやすく解説するパンフレットをつくったりして、外国人旅行者が戸惑わないように配慮しています。ここでまず温泉入門を果たしてから、本格的な温泉宿に出かける旅行者も少なからずいるかもしれません。
日本人にとっては一見ベタすぎたり、ありふれていたりする施設のようでいて、外国人旅行客が大喜びするような施設。それが、これからのインバウンド観光ビジネスの一つの解なのではないかと思っています。(森山たつを)