フツーの人は、不正をすると良心がとがめ、発覚を恐れて不安になる。そのような心理状態は、その人の言動や表情などに何らかの変化をもたらす。
観察力が鋭い人は、部下、同僚、上司のそのような変化、つまり「不正の兆候」を鋭く察知できるだろう。理想的には、不正の動機となるプレッシャーや不満の高まりによって生じる兆候に気づければ、不正を未然防止することもできる。しかし、現実には不正が発覚してから「今思えば」「あの時きちんとチェックしていれば」と後悔するパターンが多い。
どうやって感度を高めるか
そこで、会社として不正対策を強化するためには、そのような兆候に対する従業員の感度を高める努力が必要だ。では、どうしたらそのような感度を高めることができるのか。その第一歩は、不正の兆候にはどんなものがあるかについて認識を高めることだろう。
このコラムではおなじみの公認不正検査士協会(ACFE)では、会員を対象とした国際的な不正の動向調査を2年ごとに行い、その結果を公表している。その中に、不正を犯した者が示す言動面の兆候(behavioral red flags)が掲載されており、感度向上の参考になる(過去の報告書の日本語版は、日本公認不正検査士協会のウェブサイトで閲覧可能)。
では、ここで問題。ACFEの最新の動向調査(2016年版)において、最も多く見られた兆候は何か。