「ゆとり」が「ゆとり」を
社長によれば、実は同社の管理者世代こそ、1966年生まれ以降の、文部省が詰め込み教育からゆとり教育へ方針転換した結果生まれた「ゆとり第一世代」なのだとか。彼らが新人として社会人デビューした頃は、「傷つきやすいので、やさしく大切に扱え」とばかりに大事にされ、会社員生活の入口から過保護に育てられました。
その彼らが今や指導者の立場になったわけです。背景にはゆとり管理者がゆとり新人を受け入れる時代が来たという、これまでになかった新しい難しさが秘められているようなのです。
「結局毎年中途採用で新人が抜けた穴埋めをすることになるし、何より辞めてしまう新人が気の毒なので、今年から新卒採用はやめました」と、D社社長は、もはや新卒採用についてはあきらめムード。新人を辞めさせずに育てるには、まずはゆとり世代管理者教育が不可欠、そんな結論を示唆する社長の話でした。
世の中堅・中小にも、「新卒を採れることなら採りたい」という企業は実に多いのです。しかし短期退職者が増えている昨今、新人も会社も不幸にならないために経営者が取るべき姿勢は、ゆとり管理者の有無を含めた人材育成環境を十分認識した上で、自社にゆとり新人を受け入れる体制が整っているか否かを判断することではないかと思われます。そうした慎重さをもって採用活動をして欲しいと切に願うところです。(大関暁夫)