どんな時に辞めたくなったか
ある企業で営業チーム強化のお手伝いをしていた時のこと。ゆとり世代のグループヒアリングで私は、「これまでどんな時に、会社を辞めたくなったか」という質問をしました。私は「実績が上がらず、叱責される時」とか、「失敗してお客さんに叱られた時」といった答えを予想していたのですが、少々外れていました。
皆が一様に共感していたのは、「新人時代に、何をやっていいのか分からなかった時」だったのです。逆に「叱られることは、プロとして仕事をしているという実感が得られる」という意見も出るほどに、辞めたくなる要素とは少し違うのだと。
「一番辞めたかったのは、新人時代に何をやっていいのか分からなかった時」。この発言を思い出して、10日で退職し研修に来なかった4人もそうだったのかもしれないと想像しました。
ではなぜ受け入れ側の企業は、新人が「何をやっていいのか分からない」状況を作ってしまったのでしょうか。
「ここ数年、毎年新人を数人採用するものの、必ず2~3か月で辞めてしまう社員が出る」という、IT機器販売のD社社長から聞いた話にそのヒントがあるように感じました。
「今の連中はヤワなやつが多いから厳しくやりすぎるなよ、と管理者に口酸っぱく言っているのですが、それでも毎年辞める新人が出てくる。現場でやりすぎたのではないかと実態を調べると、今の管理者には、叱るどころか新人から嫌われたくないとばかりに、指示すら出せずに自分ですべてやっちゃう連中が多いのです。それを新人は、自分は会社から必要とされていないのだと勘違いして、『存在感を感じられる会社』への転職を考えるようなのです」