保障されている「退職の自由」
今回のケースでも、従業員が無断で休んだことや損害が生じた原因が、会社と従業員のどちらにあるかによって、損害賠償請求ができるかどうかや、その額が大きく変わってきます。もし会社が無茶なスケジュールでプロジェクトを組んだ結果、従業員が数百時間もの残業を強いられてうつ病にかかってしまったと場合ですと、会社の責任が大きいと認められます。そうなると、会社も安全配慮義務に違反したと言えますから、会社は同僚の方に対して損害賠償を請求できないか、できたとしてもわずかな額にとどまるでしょう。
日々の業務があまりに忙しく、残業が続いたりして「仕事を辞めてしまいたい」と考えたことがある人は少なくないと思います。しかし、無断退職は社会的に決してほめられた行為ではありません。
そもそも、労働者には「退職の自由」がしっかりと保障されており、会社にはこれを拒否する権利はありません。無断欠勤しか選択できなくなるほど心と体が追い詰められる前に、勇気を出して行動することをおすすめします。
ポイント2点
●無断欠勤を重ねると、懲戒解雇を言い渡される可能性がある。しかし労働者が解雇を拒んだ場合、会社を休んでいるという理由だけでは、合理的理由がなく、社会通念上相当でないとして解雇は無効になる。
●会社から従業員に対する損害賠償請求は制約があり、故意や重大な過失があるときに限られる。また、金額においても、会社と従業員の責任を考慮し決定されるが、わずかな額にとどまることが多い。