ずさん、デタラメ、コンビニレス...... そこから体得する大事なものがある

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   「貧乏慣れ」をすると、自分が住む場所の選択肢が海外にも増えるので、人生の幅が広がりますよ!という話を本コラムで何度かしています。

   この「貧乏慣れ」で広がる世界なのですが、みなさん東南アジアや中南米、アフリカだけだと思っていませんか?

意外に住みにくい先進国

のんびり待とうよ
のんびり待とうよ

   自分にとって住みにくい、便利ではない、日本ほど発展していない国に行けばその分物価も安く、貧乏慣れした自分なら十分に暮らしていけるだろうと考える。それはそうかもしれませんが、では先進国なら住みやすいかというと、そうとばかりも言えません。

   東京や大阪などの都市部だけにしか住んだことがない人にとって、実は欧米の都市も意外と住みにくいところなのです。正確に言うと、日本に当たり前のようにあるものが、平気で無かったりして、戸惑う人が多いのです。

   どんなところに戸惑うのか。

   日本人が欧米を中心とするさまざまな国へ語学留学に行くのをサポートする企業、EF Education First社の日本法人代表、中村淳之介さんに聞いてみました。

   中村「日本の方がアメリカに留学して一番驚かれるのが、日本が驚くほどキッチリしている国だったということです」

   森山「確かにそうですね。私も、会社員だった頃、初めての出張でアメリカのサンフランシスコに行ったときに、日本と比べて恐ろしく『ずさん』だ......と驚いたことを思い出しました。今となっては、そんなアメリカも東南アジアと比べたらきっちりしているのですが」

   例えば、アメリカでも、バスや電車が来る時間がデタラメです。バスはともかく電車は秒単位できっちり定刻を守ろうとする日本とは大違いで、平気で10分20分遅れます。スーパーマーケットが閉店時間よりも20分くらい早く店じまいしたり、銀行などの窓口で、ものすごく無礼な扱いをされたり。

   先進国だから日本と同様のサービスを受けられるだろう、と思って行ったら、かなりショックを受けることになるのです。

夜中や日曜に開いていない

   中村「イギリスやドイツなどのヨーロッパの国に留学をされた方は、それに加えて、24時間営業のコンビニが少ないことに驚きますね」

   森山「ヨーロッパでは、日曜日は安息日ですから、働かないことが当たり前ですからね」

   ヨーロッパでは、労働者の権利がしっかり確立されており、深夜残業などについては多額の残業代を払わなくてはなりません。ただでさえ高い人件費に残業代が上乗せされてしまうと経営ができないので、24時間営業のコンビニはほとんどありません(24時間営業なのは、移民の人がやっているような小さな雑貨屋くらいです)。

   また、日曜日休みの店も多く、首都や観光地以外では、日曜日に買い物ができないことが普通にあります。自分が欲しいものがあればすぐに購入できるのが当たり前になってしまった国の住人にとって、その当たり前が無いことはストレスのもとです。

   中村「ただ、このようなことにはすぐに慣れますね。数日もすれば、現地のルールに合わせて行動できるようになります」

   森山「そうですね。そうなれば、逆に、日本が異質だったとも思えるようになりますね」

   別に時刻表通りにバスが来なくても待てばいいだけですし、日曜日に物が買えなくても月曜日まで待てばいいだけのことです。受け入れてしまえば、どうということはありません。

   欧州に関しては、深夜や休日に店が開いていないということは、深夜や休日に出勤する職場が少ないということです。それだけ労働者にとって働きやすい国だということができます。

2つ以上のルールを知る

   中村「世の中のどんなことにも、いい面と悪い面があります。同じ事象でも、見方によって良くも悪くもなります。『自分が思っていたのと違う』と怒るのではなく『なぜこうなんだろう』と考え、違いを受け入れると生活はぐっと楽になりますね」

   日本だけに住んでいると、価値観がひとつになって、「日本のやり方に近いか遠いか」だけでしか善悪を判断できなくなってしまいます。しかし、世界にはいろいろなやり方があり、それぞれにメリットデメリットがあることを知れば、その国のやり方を受け入れ、ストレスの少ない生活を送れるようになるのです。

   中村「私たちは、長期・短期、欧米、中南米、東南アジアなどあらゆるタイプの留学をお手伝いしています。どこに行った人も、この『日本とは違うルール』を体験し、それを受け入れるようになります。日本に帰ってからも、細かいことに動じないようになりますね」

   ひとつしかルールを知らないと、そのルールが絶対になってしまい、ルールを逸脱したものを「おかしい」と糾弾してしまいがちです。

   しかし、2つ以上のルールを知っていれば、「自分たちのほうがおかしいかもしれない」とか「こちらの正しさもあるかもしれない」と相対化して考えられます。そうやって、考えを固定化せずに、いろいろな国のいいところを見つけ、それを利用して生きていけるようになると、海外での生活が楽しくなります。

   これから先、海外で長期間生活する予定はないという人も、短期留学でもいいので一度、海外で生活する経験を積むと、日本国内で、心穏やかに暮らせるようになると思いますよ。(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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