アドラーはこう教える
松下幸之助の叱責が、部下の成長を促す要因となったのは、長い間の経営者としての手腕、豊富な経験と実績、それらが優れた人格と相乗し、部下との間にラポールを形成していたからだと思われる。
幸之助のようなリーダーとしての十分な実力や、部下からの尊敬がないまま部下を叱りつけると、逆効果や反発を招く可能性が小さくない。
叱る目的は「間違った行動や考え方を是正すること」である。部下の行動が是正されなければ意味がない。「信頼」が前提になければ、むやみに感情的対立を掻き立てるだけである。
それでは、ストレスチェック義務化時代の、効果的な部下指導はどのように行えばいいのだろうか。
心理学者ムーアは、「賞賛は、叱責よりも、精神的不健康を引き起こすことが少ない」と述べている。それは、多くの人の実感するところではないか。だからといって賞賛ばかりしていると、心理学者のアドラーが指摘するように、「上司がいるところで褒められるような行動をとるようになり、いないところではサボることとなる」。
アドラーは「褒めるのではなくて、事実を認めてあげることが大事」と述べている。
結論としては、松下幸之助のようなリーダーを目標として実力と人格を身につけ、部下との信頼関係を大切にしながら、愛情を持って、理性的に部下を指導していくことが、現代のようなメンタルヘルス重視の時代には求められているようだ。(佐藤隆)