部署を超えた協力関係
ある調査機関が企業数十社を対象におこなった、「イノベーティブな風土と組織のコミュニケーションの関係」という興味深いレポートがあります。それによれば、『イノベーティブな風土』と最も相関が強かったのは、「トップを含めた幹部同士のコミュニケーション」と「社員間の所属部署の領域を超えた協力関係」にあり、同時にこの2要素間には強い相関性が認められたといいます。これは、組織の幹部同士のコミュニケーションが、現場社員の既存の枠組みにとらわれない行動に影響していること、既存の枠組みを超えた横のコミュニケーションが『イノベーティブな風土』醸成に影響していること、を示唆しています。
そしてもうひとつ、この調査では、幹部社員ひとりあたりが1週間に他の幹部メンバーの2割程度としか話していなかったことも判明しました。中には半数以上の幹部が他の幹部メンバーとまったく話していない、という企業も。その半面、現状の2倍以上のメンバーと目標達成のために話し合いたい、という気持ちを持っているという結果も出ているのです。
こうやって見てくると、多くの企業経営者に共通の「組織活性化」「社員の自立性欠如」「企業風土改革」といったお悩みは、実は社長自身がその解決のカギを握っていると言えそうです。社長が、いかに一方的でなくかつ分け隔てのないコミュニケーションを社員との間に持てるか、幹部を中心としていかに自然と社員間のコミュニケーションが活性化するような仕掛けが社内につくれるのか、ソフト、ハード両面からの変革意識が社員と会社に新たな活力を生み出す原動力になるのではないでしょうか。
Oさんの活力あふれる変貌ぶりとT社のイノベーティブな雰囲気を感じさせる社内に、大きなヒントをいただいた気がしました。(大関暁夫)