長寿企業の「転業率」 低い業種とその理由

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   30年間も、経営が続けられる会社はまれであり、代替わりできた企業の経営者はたいへん優秀という話を、前回にいたしました。今回は、さらに、創業時に始めた業種を、いまも続けられている会社は、素晴らしく幸せという話題です。あなたが勤めている会社の業種と変遷を考えながら、お読みください。

   流れゆく時代の中で、企業が粘り強さを発揮できるかどうかは、今後の仕事を考える上で、重要な視点です。長寿企業の実績から学んでみましょう。

いかに転業してきたか

   筆者が調査した企業を7つの分野に分け、それらの転業率、つまり創業時の業種から、現在の業種が異なっているのは、以下のようになっています。建設業5%、食品製造業16%、その他製造業27%、流通業10%、非製造業18%、水産・鉱農業と金融業は母数が少ないので外します。これをよく見ると、意外な側面が見えてきます。

『成功長寿企業への道』(浅田厚志)より
『成功長寿企業への道』(浅田厚志)より

   表によると、建設業が増えています。しかも、転業率が最も低いのは大健闘です。2010年までの100年間のGDPを見ると、戦時中の5年と併せて、14回がマイナス成長と考えられます。ということは、日本経済は86年間、プラス成長でした。倒産する企業も多い建設業界ですが、この100年はよい時代であったのでしょう。

   食品製造の社数が変わっていないのは5社が出て、5社が参入したからです。それ以外の会社は144年間、ずっと食品を製造してきました。

   その他製造はもっとも社数を減らしています。食品以外の製造業には厳しい時代であったといえます。衣食住が強いというのは、製造業の中だけを見ても確かなようです。機械や道具などを作っていても、代替するものが現れてきたら、たちまち社会から駆逐されます。レコード盤や写真フイルムなどがわかりやすい例です。

転業の延長線上に見える会社の将来像

   他業種から7社が流通業に転業したようです。製造業は設備や職人を備えていると、なかなか転業しにくい業種です。製造業から流通業に転じた経営者たちは、その自在さに憧れたのでしょうね。

   流通業は、もともと119社と最大でしたが、12社減って、20社増え、差し引き8社増やして、127社になりました。それは流通業への転業のしやすさを表しています。流通業の強みは、自由自在、融通無碍であること。その時代の情勢にあわせて商品を変えてきた結果、生き残った企業が多くなったようです。

   会社の経営方針を定めた「社是」や「社訓」を制定している企業の割合がもっとも低いのは流通業です。かえって乱世の時に邪魔になる、という理由でした。

   さて、あなたが勤めている会社は、今までどういう転業をしているでしょうか。その経緯を詳しく見てみると、その延長線上に、会社の将来が見えてくるかもしれません。(浅田厚志)

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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