歌謡入社式とは?
戦後に入ると、入社式の整備が一気に進み、関連の文献が一気に増えていきます。
その反面、若者批判論の一環で入社式が使われるようになるのが1960~1970年代にかけて。
さらに、単なる入社式では面白くない、とユニーク入社式も登場するようになったのも1970年代。
その典型が、現在も続いている靴クリームメーカーのコロンバスが実施する「靴磨き入社式」。先輩社員が新入社員の靴を磨いた後(使うのはもちろん自社製品)、今度は新入社員が先輩社員の靴を磨く、というものです。
「当社の『靴磨き入社式』であるが、昭和四十六年度から初めて、これを実施してみた。(中略)彼等(新入社員)の中には、職業を通じて、生活を確保し、その職場のセクションで与えられた仕事のみを修得しようとする考え方が先行していて、この職業によって消費者に与える効果というものを考えていないことになる。当社は、このギャップを入社と同時に、消すためのキャンペーンとして、『靴磨き入社式』を実行していることになる。(中略)新入社員が靴を磨くことの物理的効果から出発して、仕事の腕を磨き、美しさを求める産業のひとつとして、それぞれの職場を理解してもらえれば、この『靴磨き入社式』は成功したことになるのである」(『経済往来』1972年6月号・服部洌「靴磨き入社式」/著者は当時のコロンブス社長)
『週刊平凡』1979年4月19日号では、この靴磨き入社式のほか、二宮金次郎入社式(新入社員1人だけ草加駅前での二宮金次郎に扮して1時間耐える/埼玉・ブンブン餃子)、歌謡入社式(2部で徳光和夫司会・森山良子のワンマンショー/イトーヨーカドー)、会社案内作成(新入社員研修の一環として入社案内を作成/東京ブラウス)、変わり種入社式(笑顔を練習する「スマイル入社式」、川上哲治を講師に呼んでの「ダルマ祈願入社式」、そろばん日本一を呼んでの「ソロバン実践入社式」など中身を毎年変える/小泉グループ)なども紹介しています。