自らは代表権を持たない平取締役に降りた
そしてもうひとつの驚きが、Fさん自らが3頭体制のスタートと同時に、自ら代表権を持たない平取締役に降りたことです。
「この先2年は側面フォローしますが、私が院政を引いたらせっかく企業文化を変えるための新体制が、何の意味もなくなってしまう。権力承継はあくまで潔く、これもまた来たるべき将来の政権交代時に備えて新たな文化として根付かせる、そういうことです」
その後Fさんは予定通り、2年で退任。一方3頭体制は、その2年ですっかり定着しました。現在、3代目も3頭トップの下について経営の一翼を担う立場でご活躍中。次代体制への以降準備も着々と進んでいるようです。
Y社社内の知り合いに聞いた話では、「若い経営者が近代的な運営をするようになり、創業者時代とはすっかり企業の雰囲気が変わり、まさしく『第2創業』を実感しています」とのこと。業績も至って順調です。ワンマン体制下の企業風土改革実現に向けた橋渡し役としての短期外部経営者登用と、その後の分業トロイカ体制による一気の経営若返り。ワンマン経営からの事業承継成功例として、大いに参考になる事例であると思います。
(大関暁夫)