役員異動発表に周囲は驚き、社内は沸いた
Fさんは悩みました。果たして外様の自分が、新たなワンマンになることなく、創業来長年培われた社風、企業文化をそう簡単に変えることができるのだろうか。力づくで行動を起こしたなら、かえって組織が崩壊してしまうのではないかと。当然、人脈を駆使して様々な知人、友人に意見を求め相談したと聞きます。そして、出した結論が、「自分が先頭に立つのではなく、企業文化を変える方向性をしっかりと見出し、それに向かって走り出せる体制をつくる」という目標に、期限を切って取り組むということでした。
社長に就任すると、旧体制下で創業者にベッタリで「優秀なイエスマン」として長年重要ポストを占めてきた、役員はじめ幹部社員たちが急激にスリ寄ってきます。Fさんは、これを全面的に受け入れることなく、かと言って排除することもなく、自然体で対応します。どうあろうともロートル役員に企業文化を変える旗振りはできないと考えたこと、ただし今は余計な反対勢力は作りたくない、そんな気持ちからの対応だったのです。
Fさんがしたことは、幹部を見渡してその実力をしっかり吟味し、自分の後を誰に任せ、どのような体制を組ませるか、それを明確に決めること。Fさんは周囲の誰にも公言していませんでしたが、心に決めた期限は1期2年でした。
2年後の役員異動発表に周囲は驚き、社内は沸きました。Fさんが後継指名したのは、役員としては最若年層に属する40代後半の若手幹部でした。さらに同年代の役員2人をナンバー2に据えて、実質的な若手リーダーたちによる3頭トロイカ体制を組ませたのです。
「創業者の体制に、幹部としてはどっぷり浸かっていないフレッシュな人材を登用すること、それを最優先で考え、かつワンマンにならない分業管理をしっかりトップ層から根付かせようと考えに考えた末の結論がこれでした」