社内不正を内部告発したい 本当に保護されますか?不安です
【「フクロウを飼う」弁護士と考える】

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   先日、京都市の公益通報外部窓口に通報した男性職員が「内部記録を持ち出した」として停職3日の処分を受けたというニュースがありました。こうした事態に対し、消費者庁は公益通報者保護制度の改正に向けた有識者検討会を開き、「法改正も含め検討すべきだ」とする報告書をまとめるなどしています。

   今回は内部告発、公益通報者の保護についてお話ししていきましょう。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

コンプライアンスへの意識が低い会社

内部告発を理由に不利益を被ることはあるのか
内部告発を理由に不利益を被ることはあるのか

   私が今勤めている会社で、新しくコンプライアンス室を設置することになりました。今更設置する事でも分かる通り、会社自体のコンプライアンスに対する意識は低いです。実はすでに、外部に話がもれると大問題になる不正も起きています。

   担当者は隠ぺいしようとしていますが、私は早く膿(うみ)を出すべきだと考えています。例えば、私がコンプライアンス室に内部通報した場合、通報者名は明かされてしまうのでしょうか。また、通報した事による報復や不利益処分等を受けることはないのでしょうか?(実際の事例を一部変更しています)

弁護士回答 「告発理由に制裁」の現状も

   内部告発とは、会社内部の人間が、不正の目的なく、その会社の不正や悪事(法令違反など)を、上司や外部の監督官庁、または報道機関などへ通報することをいいます。

   会社の不祥事やその隠ぺいが、この内部告発によって明らかになるケースが近年多くなっています。一方で、そのような会社では、内部告発を理由とした制裁が行われているのもまた現状のようです。

   この内部告発については、2006年4月から施行されている「公益通報者保護法」により、会社内でのさまざまな法令違反行為に対する通報者の保護が図られるようになりました。この法律は、監督官庁やマスコミへの不正の通報も一定の要件のもとに保護の対象としていますが、とりわけ会社内部への通報を保護しています。

   会社内部への通報については、不正の事実を知っていることを理由に会社から金銭をゆすりとろうとするような不正の目的さえなければ、内部告発を理由にした解雇は無効となり、解雇以外にも給与の差別、異動、あるいはもっぱら雑務をさせるといった不利益な取扱いも禁止されています。

   社内にコンプライアンス室のような部署がない場合には、たとえば不正を行っている者の上司に対して告発することでも構いません。

匿名告発の場合は

   匿名で内部告発をすることも可能ですが、通報時には匿名でも、その後の事情により通報した本人が特定され不利益な取扱いを受けることがあるかもしれません。しかし、このような場合にも、「公益通報者保護法」によってそのような不利益な取扱いは禁止されます。

   なお、本件では問題とならないと思いますが、「公益通報者保護法」の保護の対象にならない場合であっても、内部告発が正当なものとされる場合があります。

   これまでの裁判例からすると、(1)告発内容が真実か、または真実と信じる相当な理由があるか、(2)告発の目的に公益性があるか、(3)告発の手段・方法が相当なものかなどを総合的に考慮して、内部告発が正当と認められる場合には、仮に会社の名誉・信用が損なわれたとしても懲戒処分を行うことはできないとされています。

   コンプライアンスは、リスクマネジメントと企業価値の向上の両面において非常に重要な要素です。せっかく設置されたコンプライアンス室が、ただのお飾りでは意味がありません。前述したしたとおり不正の目的さえなければ、会社が解雇や不利益な取扱いをすることは許されませんので、ぜひ勇気をもって行動していただきたいと思います。

ポイント2点

●2006年に施行された「公益通報者保護法」によって、通報者に対する内部告発を理由にした解雇、異動などの不利益な取り扱いは禁止されている。

●保護法の対象にならない場合であっても、内部告発が正当と認められる場合には、仮に会社の名誉・信用が損なわれたとしても懲戒処分を行うことは出来ないとされている。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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