今の日本では、昔のように「物理的ストレス」で、飢餓に苦しんだり、猛獣に襲われたり、凍死したりするような危険はあまりありません。
物理的ストレスは少ないはずですが、今度は「心理社会的ストレス」が増加しているのが現代です。厚生労働省の「ストレスチェック義務化」の対象も、「働く人の心理的負荷」なのです。
受け止め方次第で「都会のジャングル」に
「心が苦しいよ・・・」と、いうことです。
しかし、心理的負荷を与える要素は無限にあると言ってもいいのです。例えば、
「嫌で生意気な、恩忘れサル的ずるがしこい部下」
「『水を飲むときは、井戸を掘った人のことを忘れてはいけない』という格言など無視の若い世代の増加。あんなに面倒見たのに、許せない」
「わけのわからないことを言いまくる。反論しようものならかみつくようなライオン上司」
「癒しを期待する、配偶者からは『安月給取り』となじられる」
「『掃除、洗濯、育児』は押し付けて、やれ飲み会だと遊びまくる配偶者」
「謝れ、としつこいネチネチお客様」
などなど。
安全な職場も「心理的受け止め方」次第では「都会のジャングル」となり、同僚や上司も、蛇、豹、クマ、サメのように思ってしまう。
職場で超モテ、「ソクラテスのハァさんと呼ばれた男」
ハァさん(男性、事務職)は、不惑の年を過ぎた。若い時に胸の病を患い、昇進からは遅れている。
後輩の若いパワハラ課長の下で、顎で使われても、文句ひとつ言わず、上司を助けて、良く働いている。
本来ならば、ハァさんが上司になってしかるべきだが、一度も愚痴をこぼしたことがない。
ハァさんは、若い女子社員に持てる。バレンタインデーに他部署の女子社員からもチョコレートが山ほど届く。
ハァさんは、会社の健康体力テストで、敏捷性も含めて最優秀だった。
人にやさしく腰も低く謙虚だ。
仲間が、ハァさんに「どうして腰が低く、元気なのか?」と聞いた。ハァさんは「女房のおかげです」と答える。「家では、私が洗濯、掃除、家事をしています。雨が降っても取り込まなくてもいいように部屋干しです。移動は、すべて腰をかがめて動きます。会社でもつい、腰をかがめて歩いているだけです。ははは・・・」と。
人に感謝し、身体を動かす
若い体力の秘密については?
「遅く帰ると、女房が箒の柄の部分で、足や頭を叩くんです。だから叩かれないように横に避け、ジャンプして足を叩かれないようにしています。」
と、すべて奥さんのおかげと考え感謝している。
アルバート・エリスの認知理論のとおり、同じストレッサーがあっても「認知(受け止めかた)」によりストレス反応は異なります。
哲学者ソクラテスの妻「クサンチッペ」は有名な悪妻です。ハァさんは、クサンチッペ的奥さんと暮らしていても「自分が健康なのはストレスを与えてくれる奥さんのお蔭」と感謝しています。自己成長の糧と思って暮らしています。だから職場では「ソクラテスのハァさん」と呼ばれているのです。一方、奥さんの方は、運動不足と栄養過多で「メタボ」になったそうです。
ハァさんのように人に感謝し、身体を動かして暮らすことが、一瞬にしてできる最強のストレス・コントロール方法のようです。(佐藤隆)