区切りの年に改めて思う、企業経営に欠かせぬ大切なもの

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かつての上司が教えてくれた

   実は私の人脈のつくり方は、銀行本部時代の上司から学んだものなのです。

   当時私の上司であったF副部長は、とにかく日中ほとんど自分の席にいない。しかも夕方席に戻るや、接待や会議がない限りほぼ毎日定時に職場を出るという、一日デスクにしがみついて大量の残業も厭わないというのが常識的な銀行界にあって、非常に珍しいタイプの方でした。

   では日中は何をしているのかと言えば、銀行内でとにかくあらゆる部門に顔を出し、役員以下各部署のキーマンとの様々なミーティングに明け暮れていました。時には「部内の打ち合わせはお前らに任せたぞ」との発言もはばからず、部内よりむしろ部外を重要視しているようで、部内から不満をぶつけられることもありました。

   しかし、副部長は日頃の他部門との密な関係づくりにより他部門からの信頼が抜群に高く、お陰で我々部下はどれだけ仕事がしやすかったか知れないのです。

   夕方の定時帰りは、決して家に早く帰るのが目的ではありません。連日他業界の友人や知人たちと「情報交換」と称して食事をしながら、あるいは杯を傾けながらひと時を過ごす、時には友人の紹介で様々なパーティーに顔を出す、そんな毎日を送っていたのです。

「社内の人間や同じ業界の人間ばかりと付き合っていたら、世の中の流れが正しくつかめなくなる」

が口癖で、我々にも「とにかく社外人脈を大切にしろ」と常々話していました。

   部下が何か仕事での悩み事をぶつけた時には、決まってしてくれたことがあります。分厚い名刺ホルダーから1枚の名刺を取り出して、「これをコピーしろ。俺が事前に一言入れておくから、そいつに連絡を取っていろいろ話を聞いて何かヒントがつかんで来い」と言う。自分の人脈の中から惜しまず人を紹介して問題解決の糸口を探らせるというやり方でした。お陰で我々も、随分と社外に人脈をつくるチャンスを与えてもらったものです。

   F副部長は、銀行の中で人脈が量、質、共に図抜けていました。銀行では最終的に専務取締役にまで上り詰められ、その後東証一部上場企業の社長として活躍されました。地銀の一役員が一部上場企業のトップに座るケースは少ないのですが、あの人脈組成、活用術はどの業界どの組織にいても、まちがいなく企業経営の役に立ったのだと確信しています。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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