完璧ばかりが能じゃない 就活に求められる「中途半端力」とはなんぞや?

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   今回のテーマは「中途半端力」です。中途半端でもくよくよ悩まず、「まあいいか」と軽く流せる力、とでも言いましょうか。

   もちろん、完璧にこなすのが理想であることはいうまでもありません。

   ただし、就活や就活後の社会人生活では、同時進行で様々なことをこなしていくことが要求されます。それは、中途半端な状態をある程度は受容することを意味します。

電車が遅れたぐらいで勝手に諦めるな

社会人にも、適度なゆるさは必要
社会人にも、適度なゆるさは必要

   その典型が電車・交通網の遅延・運休です。本稿執筆時点でも、JR高崎線のダイヤが乱れ、新幹線で振り替え輸送をするなど混乱が続いています。

   もし、会社説明会や選考に向かう途中で遅延・運休が発生した場合、これは事情を企業側に連絡するしかありません。

   ところが、中途半端力のない学生だと、

「どうせ遅れるのであれば、もうこの企業はダメだ」

と、一人で勝手に諦めてしまいます。

   かりにすぐ連絡が取れなかったとしても、あとで連絡すればいいだけです。企業からすれば、電車の遅延・運休と分かれば、代替策を検討するはず。連絡しないと、本当に「終わる」だけです。

   学生からの相談で、昨年から今年にかけてやたらと増えたのが、

「グループ面接のとき、どこを見ていたらいいのか」

   面接担当者を見つめ続けるのがいいのか、他の学生にも視線を移すのがいいのか、という問いです。

   「そんなの適当に配分すればいいじゃない」と思うのですが、この回答は学生にえらく不評です。

   そういえば、似たような疑問に、

「『一言』って、どれくらいの長さですか?」

というのもありました。答えのない、中途半端が不安を生むのでしょうか。

   就活イベントや面接などが終了したあと、参加した社会人と、あるいは学生同士でちょっとお茶でも飲む、あるいは居酒屋で懇親会、ということがよくあります。ここでも参加する、しないの両極端に答えを絞って大いに迷うようです。

   もちろん、無理に参加することはないのですが、社会人なら、

「最初の1時間だけ」
「途中で先に帰る」

など、極端ではない選択肢も考慮に入れ、どうにかやりくりしようとします。

   一度、学生にそういう話をすると、

「え? 途中で帰ってもいいのですか?」

と、逆に驚かれました。

そういうものだと割り切れ

   こうした中途半端力、もたない学生に共通しているのは、社会人との接点の少なさです。

   社会人と接点の豊富な学生だと、同時進行で多くのことをこなさなければならないことをよくわかっています。そのため、グループ面接中はどこに顔を向けているべきか、などと質問することはまずありません。

   しかも、中途半端力のない学生は、社会人から少しネガティブなことを言われただけで、へこんでしまいます。

   その結果、ますます就活がうまく行かなくなってしまいます。

   では、中途半端力の乏しい学生はどうすればいいでしょうか。

   まずは、中途半端であることに対して「仕方がない」と諦めることです。

   同時進行で多くのことをこなそうとして、それぞれが中途半端な状態になってもそういうものだと割り切ること。

   特に新聞や『就職四季報』などについては、細大漏らさず完璧に読もうとはせず、斜め読みしていくことを強くお勧めします。

   できのよくない学生ほど、「まずは自己分析を固めてから」などと言い出し、そこから先に行けないままドツボにはまっていく、ということがよくあります。

   社会人になったって同時進行で多くのことを抱えます。途中経過だけ見れば、全部中途半端、ということだって珍しくありません。そういうものだ、と割り切るのが社会人です。

   社会人イコールすごい、と思い込む学生も多いのですが、そのゆるさのあたりも見てほしいなあ、と思う今日この頃です。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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