「仕事が楽しみならば人生は楽園だ」とはロシアの作家ゴーリキーの言葉である。「居心地の良い職場」にいたAさん(36歳、男性)は、ある日、営業部長として抜擢された。
就任後、机の前に座っているだけで顔から汗が出る。「仕事がわからない、自分は人よりも劣っている」「前の職場に戻してほしい」等々の不安症状が頻発した。心療内科を受診し「うつ状態」と診断された。
未来を予測して対策を準備
Aさんのように「仕事内容が大きく変わった」ことが原因でストレス状態になる人が多い。職場は毎日が受験競争と同じだ。過去問題は解けるが、新しい試験問題が出ると、うまく解ける人とそうでない人が出てくる。Aさんは、突然の変化に適応するスキルが不足していたことが、後者になった要因と推察される。ハイパーチェンジの時代に常に必要なのは、以前にも紹介したセリエ博士が提唱している「あらかじめ未来を予測して対策を準備しておく」ことだ。
Aさんは、居心地の良い職場にいるときから、変化を予測して準備しておく必要があったのだ。
自分のキャリアの未来予測をする。その変化を想定して、仕事を進めていく過程の障害やリスクを予測する。
●物理的準備:日程、能力、スキル、要員、資金等は大丈夫か。
●心理的準備: ポジティブに考えることだけで満足していないか。反省・改善して、そのリスクを回避して、目標達成を進めているか。
さらに、これだけでは不十分だ。未来ストレスに対処するには、これにプラスして、あなたへの応援団が必要だ。昔話の桃太郎には、3人の優秀な応援団がいた。
キジ、サル、イヌの応援団を
キジさん=情報収集能力だ。ストレスは、ステルス戦闘機と似ていてレーダーに映らない。だから情報から未来の変化を予知し、予見する能力が必要だ。
サルさん=戦略立案をする知恵の機能だ。「賢明な頭脳」が必要だが、ハイパーチェンジの特徴は未来が不透明なことだ。対象のない心配を不安という。未来ストレスは「不安なサル」を作り出す。だから、あらかじめ準備し、具体化した対象にすることが不可欠だ。
イヌさん=実行力の象徴だ。しかし、イヌさんは忠誠心が高く、うまくいかないと落ち込み「自責イヌ」になる。必要なのは「自責」ではなく、「自己効力感(やればできる)イヌ」だ。
新しい未来ストレスに対処するためには、あなたはキジ、サル、イヌの応援団をしっかり持つ必要がある。心が疲れてくると「不安サル」や「自責イヌ」になる。心の栄養素である「キビ団子」というご褒美をあげて、「自信サル」や「やればできるイヌ」にすること。そうすれば「ストレスに強い奴ほど、良く眠る」となるかもしれない。(佐藤隆)