「ずるずると倒産」させるタイプの経営者 「起業30年説」から考える
【長寿企業の素顔】

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   経営者にとって、もっとも難しい仕事は後継者の育成です。特に、創業経営者にとっては最大の仕事と言えるでしょう。

   1980年代に、日本経済新聞が提唱した「企業30年説」というのがありました。企業は勃興してから、多くの場合、30年で経営の絶頂期が終わる、という調査結果でした。それは企業のビジネスモデルの時間的な限界が主旨でしたが、筆者はもう一つの「起業30年説」があると思っています。それは経営者個人のライフサイクルとの関係です。

経営者のライフサイクルとの関係

企業と共に年輪を重ねた経営者にもライフサイクルが
企業と共に年輪を重ねた経営者にもライフサイクルが

   創業者が35歳で会社を設立したとすると、30年で65歳。子供を30歳代で2人もうけたとして、60歳頃には独り立ちしているはずです。妻と2人なら、なんとか食べられる時代ですから、60歳を過ぎた経営者が家庭を支えるために仕事を頑張る理由は消滅します。この頃から徐々に会社が活力を失っていく例があります。つまり、起業してから30年頃に、経営者のライフサイクルに大きな区切りができて、それを乗り越えて、経営を継承してゆける会社と、創業者のエネルギーが減退するにつれて、力を失っていく会社があるということです。そこから、筆者が「起業30年説」とつけました。

   筆者が50歳になった時、創業から25年が経ち、この後の経営をどうするか、立ち止まって考えた1週間がありました。子供たちの進路が決まり、個人的にはあくせく働く必要がなくなった時でした。

   「さっさと経営から引退して、他のことをしようか」とか「会社を売り、大金を手に入れて高飛びしようか」などの悪魔のささやきが耳をかすめましたが、子供たちを会社に入れず、株式を社員に分け、次世代の社員に会社を継承する約束をしていたので、踏みとどまることができました。

   そこで、経営の継承を上手に行ってきた長寿企業に学ぼうと考えて始めたのが、「成功長寿企業の研究」でした。

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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