「クラウドワーク」を活かせない日本 「国内完結」の矛盾

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   日本のクラウドワークについては、かねてから矛盾があると思っていました。 その根本的な矛盾は、受注するひとが、日本に住んでいる日本人だということです。つまり同じ国の中で発注している。

   なぜこれが根本的な矛盾かは、そもそもクラウドワークの目的にあります。これは働き方の革命とかそういうのは関係なく、単純にオフショアリングです。つまり、賃金の安い海外の途上国に発注することで、コストを下げようというものです。

働き革命というより、購買革命

有能なクラウドワーカーは田舎にいる!?
有能なクラウドワーカーは田舎にいる!?

   つまり、本質はコスト削減なのであって、働き革命というより、購買革命です。

   私もクラウドワークサイトは発注側としてよく使っています。本家のoDeskなどを使っていますが、ワーカーは、まちがいなく途上国の在住です。フィリピン、インド、バングラディッシュといったアジアはもちろんのこと、最近は東欧に質の高いワーカーが多い。特に、ウクライナやスロベニアあたりには良い人がいます。主に私は、ロゴなどのデザインを頼んでいるのですが、質が高く、早く、大変たすかっています。

   oDeskには、先進国在住のクラウドワーカーは見かけません。当たり前です。その単価では食えないですから。クラウドワークとは、先進国の発注主と、途上国のワーカーを結ぶツールなのです。

   しかし、なぜか国内のクラウドワークサイトは、国内の人どうしを結びつけてしまっています。

   国内で月に20万円稼げるワーカーが111人しか居ないという話が先日話題になりましたが、これは何もおかしくありません。

「月20万円」でも双方にメリット

   ですから、発注主としては、国内で低賃金で受ける人がもっとたくさん出てこないと、この仕組みを使う意義がないし、この仕組が有用になるには、月に20万円どころじゃなくて、月に5万くらいでフルフルに働いてくれる層が国内に出現しないと困るわけです。

   発注側もクラウドワーカーの月収が50万円とか、100万円になってしまったら、そもそも、サイトを使って、そんな単価の高い人に発注する意味がなくなります。

   この構造ではlose-loseです。

   20万円という数字自体は、おかしくない単価です。単に20万円では日本に住んでいるワーカーは暮らせないだけで、20万円という絶対値自体は、おかしくありません。

   もし平均的な労働者の月収が数万円の国のひとが、月に20万円稼ぐことができたら、すごくリッチになれるはずです。

   つまりクラウドワークとは、賃金の国際的な収斂現象といえましょう。

   途上国の買い叩かれていたワーカーは、先進国からよい値段で受注出来る。先進国のボッタクられていた発注主は、途上国から安い値段で調達できる。

   その需給の曲線が重なるところが単価になるわけで、それが国際的には20万円以下でも何らおかしくないですし、20万円でも双方にメリットが有ります。これが自由経済です。

クラウドワーカーはどうすればいいのか?

   それでは結局、クラウドワーカーはどうすればいいのでしょうか。日本でクラウドワークで1000万を目指すのは上記の理由で矛盾していますので、月に10万円程度で暮らせる途上国に引っ越せばよいのです。

   例えば私の住むベトナムの地方では、私たち夫婦ふたりで不自由ない暮らしをして10万円で収まっています。

   私には、低スキルのクラウドワーカーが、やむにやまれず、フィリピンやインドネシア、カンボジアやタイの田舎に移住する未来が見えます。

   一方、今後クラウドワークを仲介する企業が成長するには、必然的に、海外のワーカーを取り入れるしかありません。中国の大連あたりにいる日本語OKなワーカーを登録させるか、もしくは、先ほどのようにフィリピンやタイに引っ越した日本人ワーカーを登録させるということです。

   そうすれば、win-winになります。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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