「社内給与格差」にみる 実力主義のメリットとデメリット

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   筆者の調査で出てきた「やや家族主義」がもっとも経営の成果が高いというのは、ほとんどの経営者に知られていません(参照:2016年2月23日配信の当コラム)。筆者の書籍『成功長寿企業への道』(2013年)を読まれた読者の感想を見たり、聞いたりしても、そのことへの驚きの声が届きます。

   また、「実力主義」「やや実力主義」をとる企業の利益率は低い例が多い、という結果は、この「実力主義」に偏った施策が原因であることに気がついている経営者も多くないようです。「実力主義」「家族主義」というのは、経営者の経営に対する考え方を述べているようですが、実のところ、社員と会社の関係を表しています。

家族主義の要点

そんなに給与が違うのか
そんなに給与が違うのか

   家族主義経営は社員を家族と同じように扱うので、よほどのことがない限り、会社から社員を退職させることはありません。社員の雇用を守り、社員の家族をも、会社の家族として扱うことが期待されます。給与や賞与はけっして高くはないのですが、確実に支給される。社内の給与格差も小さく、報酬の平等性に気を配っています。これらが家族主義経営の要点です。

   一方、実力主義経営は、社員を会社の機能の一部として考え、個々の社員が着任しているポジションに合致していることが求められます。万が一、ポジションに不適切な社員が見られたら、すぐさま取り替えられる運命にあります。給与も社員間の格差があり、それがモチベーションを高めると考えています。賞与も、実績のあった社員と、そうではない社員との間で歴然とした開きがあり、業績に応じた支払い方法をとっているようです。

   調査結果で「家族主義」より「やや家族主義」のほうが業績が良かったのは、まさに、社員と会社の関係を表しています。「家族主義」は、社員の人生を丸ごと面倒見て行こうとしますが、これを窮屈に考える人たちがいることも事実です。「やや」が付くことによって、会社の家族主義は少し遠慮気味になります。

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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