「今時の若手は・・・」という文句は、大昔から繰り返されてきた。近頃では、それに「ゆとり世代」とか「平成生まれ」などのキーワードが加わり、若者批判は相変わらず繰り返されている。
そんな若者を育てた世代に対しても、「叱らない・叱れない親や上司」といった形で厳しい目が向けられている。いや、叱れなくても、「褒めて伸ばす」という手があるではないか、という声も出そうだが、このほど、日本流の「褒めて育てる」姿勢を批判する専門家インタビューがネット配信され、注目を集めている。
学校教育の延長
このインタビュー記事は、臨床心理学者の榎本博明氏に話を聞いた「『褒めて育てる』でダメになった日本の若者 エセ欧米流が子どもの生命力を歪めた」(東洋経済オンライン、2016年1月16日)。
榎本氏は、記者のインタビューに答え、(厳しさ抜きの『エセ欧米流』の)褒める教育が、「1990年代から推奨されてきた」と指摘。それまでの競争による知識偏重ではなく、「授業中の態度や関心で成績を決める方向」になった。実力主義的な「結果」よりも、「プロセス」を評価する方向へかじを切った結果、今の若手は、「褒められるのが当たり前」で、「逆に褒められないとやる気がなくなってしまう」ようになった。
学生時代ならともかく、榎本氏が懸念するのは、「社会に出てそれが通るわけがない」点だ。「そういう若手社員は、うちの上司は褒めてくれないからモチベーションが上がらない、命令してくるからムカつく(略)」などと主張する傾向にあるとも指摘。おまけに、「褒められ続けるポジションから落ちたくないから、確実に褒められる得意な課題に限って取り組み、難しい課題は初めから避けるようになってしまう」。
そういえば、日本生産性本部が毎年好評している「新入社員のタイプ(2015年度)」は、「消せるボールペン型」だった。書き直しができる機能(変化に対応できる柔軟性)をもっているが、不用意に熱を入れる(熱血指導する)と、色(個性)が消えてしまったり、使い勝手の良さから酷使しすぎると、インクが切れてしまうそうだ。「熱血指導」で叱っていると、「褒めて伸びる」タイプの若手は「インク切れ」になってしまうのだろうか。