就活生に悲報、転じて朗報に? 「スケジュール変更」の混乱、まだ続く気配

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   2016卒の就活スケジュール変更への悪評が強いことから、17卒では「3年3月・4年6月」に変更となりました。変更が決まったのは15年11月。17卒のスケジュールは16卒と同じ、「3年3月・4年8月」のつもりでいた企業や大学は急いで変更に対応しました。

   ところが、この変更もまた悪評が渦巻いています。

   広報解禁から選考解禁までの期間はわずか3か月。有名企業はまだしも準大手・中堅以下の企業や、企業間の取引を主体とするため、学生からの知名度が低いB to B企業にとっては、学生への認知度を上げるのに十分な期間とは言えません。しかも6月は、株主総会の集中時期。最終面接を担当する経営幹部が忙しい時期です。理工系学生も卒業研究が始める時期でもあります。

   つまり、16卒スケジュールの欠陥が解決されているとは言いがたいのです。

結局、15卒以前への先祖返り?

結局・・・
結局・・・

   では、就活時期はいつがいいのでしょうか?

   新卒一括採用が続く、という枠組みで、大学・企業の担当者双方に取材すると、奇妙なほど一致します。

   すなわち、15卒以前と同じ「3年12月・4年4月」。

   問題あるスケジュールとして問題視されたからこそ、変更となったはずですが、まさかまさかの先祖返り。

   中堅以下の企業からすれば、大企業が先に選考をやることですみ分けが図れる、と考えています。

「本命企業の選考が終わらず、イライラすることもありません」

   大学も、理工系・文系とも、15卒以前のスケジュールがベストと考えています。理工系だと、卒業研究に重複しません。文系でも、3年秋にガイダンスなどを集中して実施することで就活につなげられます。

「そもそも、期末試験後の大学受験シーズンから年度替わりの4月に選考が集中している方がよっぽど学業に影響ないことがよくわかった」

   長期留学者が帰国後、就活が終わっているため留年するしかない、と15卒以前では問題になりましたが、これも難関大の国際系学部教員は一笑します。

18卒はもう時期変更決定?のアンケート

   もっとも、大学・企業とも、大半の担当者は17卒のスケジュールが決まった時点で長続きするわけがない、と見ていました。

   「3年3月・4年6月」というスケジュールでは、広報期間が短すぎるなど前記の問題点があることなど、実施前から明らかだったからです。

   そして、18卒がさらに変更になりそうです。

   その理由を示すものが、2月、各企業の採用担当者のもとに送られてきました。某就職情報会社から送付されてきたアンケートです。このアンケートの項目の一つに時期変更についての設問がありました。

   ベストの就職時期について、

「3年12月・4年4月」「3年3月・4年6月」「3年3月・4年8月」

の3択。これだと、16卒スケジュールの欠陥をよくわかっている採用担当者なら「3年12月・4年4月」を選択するに決まっています。

   アンケートを見た採用担当者の大半は「ああ、これは18卒がまた時期変更になるシグナルだな」と感じたそうです。

   食品メーカーの採用担当者は「選択肢から就職情報会社のシナリオがわかる」として、こう説明します。

「『3年12月』が圧倒的多数となるアンケートを4月か5月ごろ公表する。そのあたりだと、17卒採用の『4年6月』の欠点も浮き彫りになっている。そこで、企業の大半はどこも『3年12月』を希望している、という結果を出して、時期変更の空気を作り出す。大学側も文系・理工系とも大半の大学は『3年12月』に賛成。それで6月あたりに時期変更を発表。こんなシナリオじゃないのか」

   付言しますと、就職情報会社各社が就活時期を決めるわけではありません。就活時期を決めるのはあくまでも経団連です。

「経団連だって、後ろ倒し維持は少数派。大半は『3年12月』に賛成のはず。就職情報会社の動きは経団連の多数派の意向も受けているのではないか」

イベント会場の都合も影響?

   部品メーカーの採用担当者は、前職(イベント運営会社)の経験から、2015年秋ごろから出た就活時期論争の時点で、「3年12月」に変更となるのは18卒か19卒と予想していました。

「17卒の時期を変えたのは直前となる2015年11月。当時から関係者は皆、『3年12月・4年4月』がベストと考えていました。しかし、わずか1か月で、就職ナビサイトの仕様変更から合同説明会会場のセッティングまでできるわけがない。特に大型イベント会場では、遅くとも3~4か月前には、前金の一部を支払います。1か月前には、警察署・消防署に催物開催届や防火責任者選任届などを出さなければなりません。それでイベント会場担当者と打ち合わせが終わっている必要があります。しかし、2015年に就活時期の変更が議論され始めたのは10月ごろ。どう考えても間に合いません。その点、18卒ならまだ間に合います」

   同氏は、前述のアンケートも補強材料、と話します。

「6月に選考が始まり、これもやはり無理だった、との議論をまとめるのに時間がかかっても7月か8月ごろに『3年12月』を決めていれば、まだ間に合います。あるいは、そうなることを見越して、就職情報会社や大型展示場の運営会社などは、すでに『3年12月』に対応できるよう、準備で奔走しているのではないでしょうか」

就活時期は「かさぶた」

   いずれにせよ、15卒以前と大きな変わりはありません。根本的な解決になっていない気もしますが、「それでも、あれこれいじくるよりはまし」との意見が大半でした。

   ある採用担当者は、就活時期論争が「かさぶた」、経団連など変更しようとする関係者が「小学生」とたとえていました。そのこころは?

「かさぶただから下手にいじらない方がいい。なのに、小学生はかさぶたをはがせばもっと良くなる、と思い込む。案の定、はがしたら血が出てもっと悪くなった」

   なかなかきつい一言ですが、さらに続けていわく、

「血が出て痛いから泣いてしばらくはそのままにする。だけど、かさぶたができてしばらくすると、むずむずし出す。あのぶんだ、このぶんだ、と理屈をつけてまたはがす。その繰り返しだ」

なるほど。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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