かつて「スパルタ上司」といわれる人々がいた。中堅精密メーカーのA(59歳)さんもそうだ。Aさんは下町ロケットを地で行くような、熱血漢であり優秀な技術者であり、職人魂の持ち主だ。
定年がちらつくAさんにとって、自己課題は、技術の伝承であった。そこに転職組のBさん(32歳)を教育することになった。Aさんは持てる力を振りしぼり、仕事を覚えるようにBさんを厳しく指導した。
Bさんは3か月後、出社できなくなった
「昔は軍隊。今、会社」といわれた時代があった。新兵が、上官殿に向かって支給された軍靴が「合わないのであります」というと、すぐに「バカ者、何を言うとる、お前の足を靴にあわせろ!」と怒鳴られたという。
Aさんは、自分の昔の新入社員の時、こんな風に厳しく教えられた。
Aさんは「愛の鞭(ムチ)」を与えることが、部下指導と思っていた。しかし、部下のBさんは、3か月後には、出社ができなくなった。「このままでは、僕は壊れちゃいます。上司が怖いのです」と人事部長に訴えた――