家族主義VS実力主義 会社の「利益率」が高いのは・・・
【長寿企業の素顔】

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   今回の300社超の調査では、回答社に75の質問をしました。長寿企業は、必ずしも高収益でないことは先の連載で述べたとおり。低レベルで安定した利益を出している企業が多く、もともと高い利益率を目標としていない面があります。理由は、ある年で大きな利益を上げると、翌年の目標設定等で社員に余計な圧力をかけてしまうことへの懸念。そして税務対策の問題もあるでしょう。

   調査の中で、各社に経常利益率も尋ねています。その回答と、実力主義、家族主義の答えを掛け合わせてみると、面白い結果が出てきました。

「やや家族主義」が最も平均利益率がよい

時代と共に「主義」も変化
時代と共に「主義」も変化

   家族主義から実力主義までの5つの回答ごとに収益性を見てみると、6%以上の経常利益率を出している企業が最も多いのは「やや家族主義」の25%でした。最低は「実力主義」の8%。「家族主義」と「やや家族主義」の合計で見ると42%の会社が6%以上の利益を上げており、逆の実力主義の2項目では計27%の社にとどまりました。

   また、利益率のクラスごとに各主義の占有率を見てみると、10%超の利益率では「やや家族主義」が36%、「やや実力主義」と「どちらとも言えない」が共に29%。赤字企業に占める各主義を見ると、「やや実力主義」が43%、「どちらとも言えない」が29%、「やや家族主義」は「実力主義」と並んで14%で、「家族主義」は0%です。

   ここから見えてくるのは、経営的に安定しており、なおかつ高収益をたたき出しているのは「やや家族主義」で、「実力主義」と「やや実力主義」は収益性がよくない、ということです。

長期安定経営の長寿企業でも経営の仕方に迷い

   家族主義とか実力主義とか、あまり考えたことがない経営者も相当数いると思います。目の前の営業や生産に全力を尽くす、ということでしょうが、社員にすると会社の経営方針がわかりにくく、迷いにつながります。

   「どちらとも言えない」の経営成果は、2%以下の低経常利益率が45%。赤字企業も2%あります。「やや家族主義」の32%との差は歴然としています。6%以上の高収益率に占める「どちらとも言えない」の比率は18%、「やや家族主義」の25%との差が開いています。「実力主義」「やや実力主義」も「どちらとも言えない」の経営者も、低収益を余儀なくされている今の経営でよいのか、悩んでいることでしょう。

   「実力主義」と「やや実力主義」の経営は社員の評価に数字と実績を多用し、効率経営を目指す仕組みとして有効に思えますが、どの角度から見ても収益率が悪いようです。また、方針を明確にしない「どちらとも言えない」も、「やや家族主義」に比べて、経営成果が見劣りします。

   長年の安定経営を続けてきた長寿企業でも、経営方針に迷いがあることがわかります。調査対象は、すべて100年を超える企業群ですから、創業間もない頃は、間違いなく家族主義で始まったことでしょう。それが時代と共に変貌しています。

   長期安定経営をしてきた長寿企業ですら、そういうありさまですから、非長寿企業においては、もっと端的にこの傾向があらわれるのではないでしょうか。この結果を踏まえて、会社に対して、社員はどのように対応していけばよいか。それを次回にお話しすることにしましょう。(浅田厚志)

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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