男女共働きで育児することが当たり前になりつつある現代。しかし経済的な理由で、休業中に収入が減ることを考えて出産に踏み切れなかったり、不十分な休業で復帰を余儀なくされたり、また夫も育休を使えたとしても使わずに働いている、という家庭も少なくないようだ。
そんな中、フリーマーケットアプリで知られるメルカリ(東京・港区)が、産休・育休あわせて約8か月分の「給与を会社が100%保障」(同社サイト)という新人事制度を打ち出し、話題となっている。
育休給付金受ける社員には別の支援も
メルカリは「merci box(メルシーボックス)」という新人事制度を導入した(2016年2月1日)。
目玉は、女性は産前10週+産後約6か月間、男性は産後8週の給与を100%保障するという制度。
現状では、雇用保険の「育児休業給付金」が育休中の収入となるケースが多い。詳細は別にして概ね、育休開始から6か月までは月給の67%、それ以降は50%が支給されるという制度だが、育休中に給与が8割以上支払われている場合は支給されない。
メルカリ広報によると、育児休業給付金の支給を受ける社員についてはそれを尊重し、「給与100%保障」とは別の形で支援していく方針とのことだ。
ほかにも、子供の看護や家族の介護で取得する休暇の有償化、全社員の死亡保険加入などが新制度として掲げられている。
「戻ってきてほしい」と伝わってくる
話題になっているのは、やはり目玉の「育休中給与100%保障」だ。
ツイッターでは、
「戻ってきてほしいという会社の意志が感じられるから、いいと思います」
「男性も産休とれるし。やっぱこういう企業は伸びそうって思ってしまうよね」
などと、好意的な声が相次いでいる。
作家の乙武洋匡氏も、
「社会をリードする素晴らしい取り組み。代表を務める大学時代の同期(山田進太郎・メルカリ社長)を誇りに思います!」
とエールを送っている(2月1日)。
「もう少し他のところを手厚くする手も」
一方、ジャーナリストの中野円佳氏は、Yahoo!ニュースのコメントで、「一般論として気になる点をあげます」として、
「(1)確かに育児中社員に対して優しくはなりますが、できるだけ長く休む方向にインセンティブが働くので、今多くの企業が苦戦している『均等推進』『育児中社員の活躍』には課題が残るかもという印象。結局復帰時期は保育園の入りやすさなどで決めざるを得ない面もあり、もう少し他のところ(たとえば育休からの早期復帰に対するボーナス等)を手厚くする手もあるのでは?」
と、提言も含め2項目を指摘している(2月1日)。
まだ制度ができたばかりで、該当者がいない(メルカリ広報談、2月10日)という新制度。これから利用する社員が出てくることで、どんな広がりを見せていくのか要注目だ。(MM)