清潔ニッポンを代表するかのように、今や『朝シャン』は、中学生はおろか小学生にまで及んでいる。かつて、不潔、怠惰の代名詞であった男子独身寮においても『朝シャン』現象は浸透し、これをしなければ出勤もできないという若いビジネスパーソンが増えているそうである。
そんな「朝シャン」をめぐる、ある「事件」とその背景に潜むストレスとの関係を紹介したい。
シャワー室の中央にあったモノは・・・
A社の独身寮はすべて個室。だが、シャワー室は共同だった。多忙な朝のシャワーの時間帯は混雑を極め、改善要求が出ていた。
しかしある日、クサイ事件が発生した。B君が朝いちばんに、いつものように『朝シャン』をしにシャワー室へ入ると、中央に大きなトグロをまいた
寮での貴重な公共の場に発生したこの事件は、朝シャン族にとって多大な迷惑を及ぼす結果となった。
「『ウン』の主をさがせ!」ということになり、寮の管理人が聞き込みをして発見した。
ウン悪く発見された『主』は若手のイケメンC君であった。しかし、下半身の生理的事件であるだけに弁護する人も多く、はては大岡裁きのごとく不問に付すことになった。
「自分が認められないように思いこんでしまい・・・」
その代り、C君は会社の勧めで産業医に相談をすることになった。健康診断でも異常はなかった。C君は「分別のないことをしてしまった」と反省しきりであった。
状況を聞かれたC君は、
「以前は、地方の営業所でのびのびと仕事をさせてもらっていた。大変だったけれども、自分の裁量の範囲が広く、働きがいを感じて過ごしてきた。その努力と業績を認められ本社に来てみると、所属部署にいるのは偉い人ばかり。50代、60代の部課長ばかりが目立ち、管理職以外の社員は少なく、何一つ自分が認められないように思いこんでしまい、相当ストレスがたまっていた」
といった趣旨の説明をした。そのストレスの影響もあってか、
「あの夜は飲み過ぎて酩酊し、トイレとシャワー室を勘違いしてしまった」とのこと。「本当に反省の日々です」とも語った。
一般的に、新しい仕事職場に移動する時期は、メンタルヘルスでは『ストレス発生』時期でもあるので、注意が必要だ。このような時は、やはりアルコールよりも、運動や人への相談といった、有効なコーピングで対処することが効果的だと言われている。
その後の、C君は、産業医の勧めもあり、アルコールを控えている。あれで済んで「ウンが良かった」と語り、今は、もっぱら「控え目」にしているとのことであった。(佐藤隆)