事業の話が滞った理由
飲食店複数経営40代前半のH社長。自営のカフェで出しているスウィーツ系の菓子類が大好評で、デパートの催事などにも呼ばれテレビや雑誌でも取り上げられるなど、注目を集めていました。たまたま雑誌を見た古くからの友人で輸入商社を経営するT氏が、店売りだけではもったいないから別会社化し、T氏人脈を使って大手と組んで量販流通ルートに乗せて販売するなど、新規ビジネスを一緒に立ち上げようと持ちかけてきました。
H社長の店は一見に順調に見えていましたが、実は氏こだわりの設備投資がかさんで赤字が続いており、毎月の資金繰りにも窮する状況でした。H社長はT氏の提案に「地獄に仏」の心境で飛び付きました。T氏と共同で会社を設立する話が具体化した段階で、量販ルートに乗せるためには、製造現場を整備するなど初期投資用にそれなりの出資か銀行借入が必要、ということになりました。が、それはどちらも、現状のH社長には到底困難な話でした。
話はH社長預り状態のまま先に進まなくなり、T氏は何が起きているのか全く分からず業を煮やして言いました。
「一緒に事業をやろうと合意したのだから、すべて包み隠さずお話し頂かないと困りますよ。あんなに乗り気でいたのに、何がネックで話が止まっているのですか。教えてもらえないのなら、私はこの話から降ろさせてもらいます」
T氏の強硬な申し出に、H社長はやむなく、実は日々の資金繰りにも困っているという実情を話し始めました。T氏は唖然とします。
「この話を聞いた段階で『では、さようなら』と背を向けてもよかったのですが、古くからの友人が心底困っているという話をそのまま聞き流してしまうのも後ろめたい気がしまして」と、T氏は元銀行員の私に「相談に乗ってあげて欲しい」と、この話を持ち込んで来たのです。