結婚披露宴でつい「心よりお悔み・・・」 その失策に潜む「ホンネ」の正体
【職場のストレス大解剖】

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   ビジネスパーソンの不思議体験。

   大阪出張時、「この電車はたこ焼きです」と聞こえた。良く耳を凝らして聞くと、「各駅停車でーす」の聞き間違いという。

   彼には「たこ焼き」と聞こえたが、よくある「各駅」の聞き間違いである。

   なぜ、このような聞き間違いや、言い間違いが起こるのだろうか?

日常生活に見る、精神病理

おめでたい席なのに・・・
おめでたい席なのに・・・

   精神分析学のフロイトの考えに『日常生活の精神病理』がある。フロイトは、日常生活の中での、小さな失策行為の、言い間違い、聞き間違い、遅刻などの中に、充足されない無意識化の願望、いわゆる「ホンネ」がかいま見え、それが表出したものが失策の一つと考えている。

   冒頭のビジネスパーソンに、フロイト流の分析を試みれば、どうなるか。大阪では「たこ焼きを食べたいという、無意識的欲求」が、「各駅停車」という、音刺激により、脳内で連合して、「たこ焼き停車」という、聞き間違いになった・・・という解釈になりそうだ。

   エリート社員のA君と、同じ会社のB君は、親友であるとともに、同じ女性をめぐる恋敵でもある。しかし、その女性とB君は結婚することになった。その結婚式の披露宴でスピーチを依頼されたA君は、「心よりお祝い申し上げます」と言おうとし、つい「心よりお悔やみ申し上げます」と言ってしまった。

失策行為の中に、あなたの「ホンネ」が隠されている

   職場のコミュニケーションは、このような人間の心理と欲求が重なって、なされている。

   あなたは正確に伝えたつもりでも、聴き手の期待や欲望によって「少しゆがんで」伝わる。「失策行為の中にホンネがある」という精神分析的考えを、誰でも使用できるように作ったのが、エリック・バーンの交流分析技法である。

   「人と人の間に流れている感情」に基づく人間関係を提唱している。「幸福の心理学」とか「触れ合いの心理学」と呼ばれている。

   バーンは、3つのパターンを提唱している。

(1)相補交流:お互いに気持が伝わっている、良好な関係。
(2)交差交流:お互いの主張だけで平衡状態の関係。
(3)裏面交流:「ホンネ」が隠されていて(?)「タテマエ」が中心になされる交流。あまりうまくいかない結果に至るといわれている交流。

   ストレスをコントロールするには、人と人の交流をどのようにするかにかかっているといえよう。(3)は、ますますストレスが高じる。もっとも良好なのが、(1)のコミュニケーションである。

   あなたは何番で、職場でコミュニケーションしていますか?(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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