「尻ぬぐいストレス」という言葉がある。
想定していない「小さなショック」に、遭遇した時に起きる。
ある日、山手線の中で、真っ青な顔で携帯を握り、絶叫しているビジネスマンの声を聞いた。「おぉぉー。またかよ!」と口がゆがむ。「これで3回目の始末書だよ。あの野郎」。どうやら部下が見積書を失敗するか何かして、非常に困ったことになっているらしい。本人は係長に昇進したばかりのようで、鬼部長に始末書を取られる。叱られる覚悟で提出することを嘆いている会話であった。
「尻ぬぐいストレス」を感じるとき
社会が効率化されてくると、自分ではコントロールできない場面でも責任を取らされる。
「あいつが悪いのに、なんで俺が」と思った瞬間に、心の中は「くやしさ」「忍耐」といった忸怩たる思いにさいなまれ、心に残っていく。私は、これを「尻ぬぐいストレス」と勝手に呼んでいる。これを放置すると、トラウマと似た状態になることがある。
トラウマとは「外傷体験(精神的ショック)による心の傷」のことだ。その状態が継続した後に起こるのが「PTSD(Post Traumtic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)」である。
定義は「生死に関わるような脅威体験をし、強いストレスを受けて生じる適応上の障害」である。元はアメリカのベトナム帰還兵の方々が帰国後に、不適応状態になって苦しむ人が多かった。そこからこの概念が生まれた。「ランボーの映画」は、PTSDの映画ともいわれている。私も見たが、精神医学や臨床心理学的観点から、よく制作されていると感じた。ラストシーンの元上司の大佐がランボーの心の傷をいやす場面は印象的だ。