長寿企業はこうして会社と雇用を守る その工夫「ベスト3」とは

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守るべきは地元の信用と雇用

   アンケートの第3位の答えは、「原価を大幅に低減した」であった。同じ商品でも、かかっている原価を大幅に見直して、多少の品質を犠牲にしてでも、守ろうとするのは何なのか。それは地元の信用、看板である。アンケート回答の中に、場所を変える、という答えが見つからなかったのは筆者には意外だった。同じ商品を持って、それが売れそうな地域へ移動すれば、もっと簡単なように思う。

   しかし、それをせずに、発祥した地元で商売を続けていこうとする。そこには「地元での信用こそ第一」という長寿企業の考え方が表現されている。そして、会社を移動させると、付いてこられない社員を解雇することになるため、その道を選ばない。長寿企業にあっては、地元で培ってきた信用と、信頼関係を結んできた社員との関係は、何ものにも変えがたいということが、この結果から読み取れる。

   東京・赤坂本店の和菓子商「虎屋」も、室町時代後期に発祥した地である京都に、いまも店舗を構えている。長寿企業の粘り腰の本質が、ここに見える気がする。(浅田厚志)

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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