アート好きの読者のなかには「この絵の芸術家の世界観に、実際に入り込んでみたい」と感じたことがある人もいるだろう。もうすぐそれが、テクノロジーの力で可能になるかもしれない。
2016年1月23日?6月12日まで、米国フロリダ州セントペテスブルクに位置するサルバドール・ダリ美術館で展覧会「Disney and Dali: Architects of the Imagination」が開催されている。
これに先立ち、同展覧会で体験できるVR(バーチャル・リアリティー)の技術を活用した作品を紹介する動画が、特設サイトで公開された。
「360度」楽しめる
この展覧会では、入場者がVR体験用のヘッドセットを頭に装着することで、ダリの作品「ミレーの『晩鐘』の古代学的回想」の世界に入り込んだという設定の360度の3D体験ができる。
動画は、白い壁に飾られた前出のダリの作品にカメラが近づいていく場面から始まり、作品の手前で止まるかと思いきやそのまま絵の中に入り込んでしまう。
すると、幼少期のダリを心の中で苦しめたという2つの巨大な塔が現れる。カメラは空洞になっている塔の螺旋階段を登り、その頂上に到達。眼下にはダリのモチーフである宇宙象も架空空間に登場する。
「当時のダリは、どんなことを考えていたのだろう」と、思いにふけることができる新しい美術の楽しみ方を提案している。
ダリは、スペイン出身の20世紀を代表する画家の一人。初めに手掛けた絵画にとどまらず彫刻、版画、舞台装置や衣装のデザイン、映画制作まで手がけた多彩さでも知られる。日本でも『記憶の固執(柔らかい時計)』や『不可視のライオン、馬、眠る女』を描いた画家として知られている。
フロリダ州に行けないひとも、VR用のヘッドセットとスマートフォンを持っていれば、特設サイトでダリの美術空間の360度体験を楽しめる。
さまざまな分野に応用されるVR
近年、VR市場は急速に拡大しており、ゲームをはじめ自動車産業やエンターテイメント業界、その他さまざまな分野に応用され始めている。
VRの特徴は、3Dゴーグルを装着することで立体的な映像が視聴できるだけではなく、360度すべてを見渡すことができ、振り向いたり、上下左右を見渡すことにより、足元や真後ろまで見ることができることだ。
過去には日産自動車が、コンセプトカーの横にVR機器を設置し、クルマを自分好みにカスタマイズできるキャンペーンを展開し話題を呼んだこともあった。(執筆:赤江龍介 編集協力:岡徳之)