自治体の首長の退職手当は、一般的に任期4年ごとに支給され、度々「高すぎる」として問題視される。最近では、大阪市の新市長、吉村洋文氏(2015年12月19日就任)が「市長退職金の廃止」を宣言している。
そんな「首長の退職手当」について、栃木・那須塩原市の前市長が「退職金20円」だったことが話題になっている。支持の声が多いかと思いきや、意外にも否定的な意見も目立つ。
最後の月の月給は1円
阿久津憲二・前那須塩原市長(72)は、12年1月の市長選で「給料3割カット」「退職金ゼロ」を公約に当選。その通り、自身の給料を減額する特例条例を定め、月給を96万円から67万2000円に減額していた。
阿久津氏は任期満了にともなう市長選(15年12月27日)で敗れ、1期4年の任期を終えて退任(16年1月21日)。県市町村総合事務組合の条例に基づき、退職金はゼロとはならなかったが、最後の月の月給を1円とし、最低額の20円が支払われる。特例条例がなければ、退職金は約1935万円だった。
「高すぎる退職金」が度々問題視される首長とあって、自ら身を切った阿久津氏に支持の声が集まっているかと思いきや、どうやらそうでもないようだ。
ツイッターでは、もちろん「よっっ!アッパレ!」「こういう人こそ政治家になるべきやろ」と賛辞もみられる。が、
「やりすぎ。かっこよく見えるけど、次に市長やろうとする人がいなくなる。適正で止めておかないと」
「政治がブラック率先してどうするんだろうか。市長の価値を下げてるとしか思えないんだが」
「市長職に退職金は馴染まないけど、少なければ良いものでもない。公職の給与が安過ぎると金持ちしか務まらなくなる」
など、問題視する声が多く上がっている。今回のケースが、多選首長ではなく、1期で辞めることになったことも影響しているかもしれない。
「成果に応じた退職金を」
やや古くなるが、日本総研の渡辺康英氏は、公式サイトのコンテンツ「研究員のココロ」で、「首長の退職金」がテーマのコラムを掲載している(2006年7月31日)。
知事や市長に、1期4年ごとに数千万円の退職金が支払われていることについて、減額や廃止が進められつつあるが、
「それよりも私が気にかかることは、住民や地域にとって多くの貢献をした首長も、借金を増やした首長も条例に従って同額の退職金が支払われる点である」
と指摘。
「退職金基準額」を1000万円に定め、実績に対する評価を行い成果に応じて退職金を支払う「首長退職金査定制度」の創設を提言。「地域や住民に対して大きな貢献をした首長に対しては200%の退職金を支払っても良いと思う」と持論を述べている。
なお、那須塩原市の月給の特例条例は阿久津氏の退任とともに失効。新市庁舎建設の延期を訴え、阿久津氏に大勝し初当選した君島寛・新市長(67)は、月給や退職金減額については「検討したい」としている。(MM)