「私がこれでクビなら、社長も辞めるべき」 店長をブチ切れさせた「経営トップの勤務態度」
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社長は社員の鑑

   店長は勝手な休暇取得、遅刻とその勤怠データ改ざんの事実を認めました。これを受け、社長から懲戒解雇が告げられると、彼は吐き捨てるようにこう言ったのです。

「社長だってそうじゃないですか。勝手に休暇とっていきなり僕らに本部会議への代理出席を押し付けるし、毎日の出社時間だっていい加減じゃないですか。朝一で社長面談の予約を入れて始業時間に本社に直行しても、1時間以上遅刻で待たされることはザラです。社長と同じことをしている社員がクビになるのなら、社長も辞めるべきじゃないのですか」

   社長は彼の顔をジッ見つめると、何も言わずに部屋を出て行きました。

   社長は、「すべては経営者である自分の管理怠慢が原因であり、まずは自らが社員の範となるべく襟を正して行動し、二度と同様の事態に至らぬよう改善指導を徹底します」との文言を付して、フランチャイズ本部に報告書を上げました。

   その後この一件について社長は多くは語りませんでしたが、これを境に社長自身がスケジュールをしっかりと社員に開示し、目に見えて時間厳守、約束厳守を徹底するよう改めたと聞きます。さらに、社長自身が店舗を頻繁に訪れては直接、叱咤激励することも増えたそうです。F店は順調に立ち直り、今では約半数の店が優良店舗表彰を受けているそうです。

   「社長は社員の鑑」。社長と社員の距離が近い中小、中堅企業で、これは常に真理です。バス事故の悲劇も、社長の自覚ある行動があったならと、悔やまれることこの上ありません。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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