ありがたいことに、今(2016)年1~2月にかけて2冊の新刊が出ることになり、ゲラチェックに追われています。「ゲラ」とは「ゲラ刷り」の略で、Wordなどで筆者が作成した本文を、特定のソフトを使って本用のデザインに落とし込んだもの。いざ、本の形になってみると、Wordで書いたものとは、全く印象が違うことに驚きます。「この一文は長過ぎるかも」とか、「ちょっと太字が多すぎるかなぁ」など、直したい部分もたくさん出てくるのです。
出版社さんから「ゲラ刷り」が紙で送られてくるときには、同時に「校正さんのチェックコメント」もついてきます。「校正さん」は、誤字脱字や表現の矛盾点をチェックし、編集さんを通して、著者に指摘するのが仕事。その仕事ぶりには毎回、感動します。
「前のページの主張と矛盾しませんか?」
「『~~して欲しい』と『~~してほしい』が混在しています」「ここで引用しているデータ、正式名称は何でしょうか」「引用している欧米圏の作家名、・(ナカグロ)か=(ダブルハイフン)、どちらに統一しますか?」・・・校正さんがゲラに書き込むコメントには、いずれもハッとさせられます。
誤字脱字や表記ゆれは、私も事前チェックをしますが、どうしてもなくなりません(情けない・・・)。そのすべてを、校正さんは細かくチェックし、発見、指摘してくれるのです。「この部分、前のページの主張と矛盾しませんか?」など、冷静に分析してくれることも。
校正業界には、女性も多いそうです。社内に部署があることもありますが、別会社や、フリーランスの校正さんに委託するケースもあるとか。考えてみれば、校正さんは、編集さんの次に、筆者の文章を読む人です。編集はもちろん、最初の原稿に「ここはこうしたほうがいいのでは」とアドバイスをするのが仕事。
内容そのものへの助言がほとんどです。企画段階から、一緒にお仕事をしているので、書籍の内容に興味をもってくれるのは(当然といえば)当然。だからこそ『アツい』助言をくれるわけです。対して校正さんは、私の書籍テーマに、もともと関心があるわけではない(ことも多い)でしょう。それほど興味がないテーマでも、200ページ以上ある原稿にじっくり目を通し、文字と向き合わなくてはなりません。
まるで「文通」?
実は学生時代に就活をしていた際、「校正」の仕事に興味をもったことがありました。が、実際に本を出すようになって、校正さんの仕事ぶりに触れてみると、それは「甘かった」と思います。興味のないテーマの原稿も読み通し、前後の文脈に矛盾がないか調べる。出典を確認し、引用元にミスがないかチェックする。ことわざなどの用例も、間違いがあってはいけません。
今回の新刊は「結婚」がテーマですが、いちばん感動したのは、「妙齢」と「適齢期」の使い分け。「妙齢なのに結婚しない」という表現に対して、「ここは『妙齢』としていますが、『適齢期』では? 両者は意味が違いますが、最近では一緒の意味で使う人も多いようなので、ご判断下さい」と、指摘いただいたことです。「なんて細かい視点なのだ!」と、感動。これをきっかけに、「妙齢」の意味について調べ直したところ、面白い点が沢山みつかり、「妙齢」について1本、コラムを書くことに。書き手としての、新たな発見につながったのです。
校正さんとは顔を合わせる機会がまったくありませんが、コメントを見ていると、まるで「文通」しているような、不思議な気持ちになります。字体から、「どんな人だろう」と、想像をふくらませることも。顔は見えないけれど、校正さんには本当に、感謝しきりなのです。いつか、会ってお礼を言いたい・・・。(北条かや)