今日のテーマは「内定学生を採用活動に使う」です。
企業からすれば、内定学生をいかにして引き留めるか、どこも苦労します。
2013年ごろから売り手市場に転じ、今ではどの企業も大量の内定辞退に頭を抱えています。そんな中、比較的、内定辞退が少ないのが、内定学生を採用活動に投入している企業です。
内定学生を投入するとは?
内定学生を投入するとは、一体どういうことでしょうか。
具体的には、夏・秋・冬のインターンシップ(あるいは採用イベント)で3年生と懇談する機会を作る、インターンシップそのものを企画させる、などです。
内定者研修の一環と言い張るか、社内インターンシップとしてアルバイト料を出すかは、企業次第。
ここ数年だと、交通費・宿泊費の実費負担の上でアルバイト料を出すか、焼き肉などちょっと豪勢な食事に連れていくパターンが多い模様。
とりあえず就活を話させる
ここで従来の採用手法にこだわる採用担当者や経営幹部からすれば、
「企業のことを知らない学生が何を話すのか?」
と、訝るかもしれません。
安心してください、話せるネタはありますよ。
それは、自身の就活談です。
現在の社会人(特に30代以上)が思っている以上に、今の学生は、社会人と学生との間に厚い壁を感じています。
しかも、それは、内定学生と3年生以下でも同じ。とは言え、社会人よりはまだ距離が近いことも確か。
そのため、企業のことをあまり話せないにしても、自身の就活談だけで、インターンシップ・イベント参加の学生は、
「おおっ、すごい」
となるのです。
これは、採用担当者や社会人がどんなに頑張っても話すことができない、強力なコンテンツです。
それで、一般学生を引き付けられることを考えれば、交通費・宿泊費に食事代くらいは安いものです。
裏目的は内定学生をいい気分に
この内定学生のインターンシップ・採用イベント参加。裏目的はいうまでもなく、内定学生の引き留め策にあります。
内定後、学生はその企業で本当にいいかどうか、いわゆる内定ブルーに陥ります。
放置しておくと、他社に逃げてしまいますし、かと言って過剰な「接待」をすればいいという問題でもありません。怒鳴ってもだめ、泣き落としでもだめ。
ところが、3年生以下の学生に「内定学生です」と紹介するとどうでしょうか。
3年生以下の学生は、自身の就活が不安ですから、内定学生がより格好良く見えます。
何を話しても、
「先輩、すごい!」
となります。
尊敬の念で見られることなど、普通の学生はそうそうあるわけではありません。懇談のときにも、終了後にも、学生は質問攻めしますし、それは内定学生をいい気分にさせます。
それが続けば内定ブルーもどこへやら。入社意欲が強くなり、他社に逃げられる心配がなくなります。
内定学生への事前研修という側面も
裏目的のもう1つは、内定学生への事前研修です。
就活中の企業説明会などでいくら業務内容を話していても、きちんと理解している学生は内定学生であってもそう多くはありません。
その点、インターンシップ・就活イベントに参加させれば、どうでしょうか。就活生向けに、企業説明や先輩社員紹介などをします。
仮に同じ内容でも、就活生と内定学生という立場では視点も違えば情報量も違います。
実際に内定学生に話を聞くと、
「同じ話のはずなんだけど、就活生のときは目先の内定を取るのに忙しくて、あれこれ考える暇がなかった。だから、改めて聞いて、なるほど、と思う内容が多かった」
と答える学生が大半です。
内定学生を使う際の注意点は?
いいことづくめの内定学生投入。
ただ、問題点もあります。
いくら内定学生と言っても、話す内容などは事前に打ち合わせをしている企業が大半です。
そうでないと、内定学生が暴走してしまう、ということにもなりかねません。
学生からすれば内定学生の話す内容は企業側が是認したもの、と捉えてしまいます。
特に就活終盤、そのころには内定学生は新入社員となっていますが、就活生とは、FacebookやLINEなどでつながっている可能性が高いです。そこで、下手をすれば、入社を強要するメッセージを発しかねません。
そのあたりも含め、立ち上げるのはかなり面倒な話、ではあります。が、それをあえてやる企業は採用活動が他社以上にうまく行っている例が多数。さて、あなたの企業ではどうでしょうか?(石渡嶺司)