「あいつ、顔も見たくない。鳥肌が立つ」 その時、あなたの脳内で起きているコト

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   「善く水を制する者が、国を治める」とは、中国古代、春秋時代の斉の宰相、管仲の言葉だそうです。言い回しは他にもあるようですが、この意味するところは、水害等々の災害を治めるためには、その原因である、水をコントロールすることが、天下、国家の繁栄をもたらす・・・ということです。

   現代社会は「ストレス社会」と言われています。昨2015年から50人以上の従業員を雇用する企業では「ストレスチェック」が健康診断として義務化されました。まさしく国家としても「ストレス対策」に取り組んでいるわけです。

   その対策の効を上げるためには、この管仲の言葉がヒントになります。つまり、その因となることを把握して果をあげるアプローチにする必要があります。

人間関係を制する者が、ストレスを治める

水と人間関係の共通点とは
水と人間関係の共通点とは

   筆者は40年間、職場でのメンタルヘルスに取り組み、メンタルヘルス不全事例を調査研究してきました。表面的には、職場環境の問題を装いつつ、その本質的な原因には、どうしても「人間関係」の病理が潜んでいることが多い。

   過重労働や残業なども「上司に嫌と言えない人間関係」が根底にあることが少なくありません。

   つまり、この「人間関係をうまくコントロールすること」が、メンタルヘルスを保つ秘訣なのです。職場のメンタルヘルスでは、「人間関係を制する者が、ストレスを治める」といえるでしょう。

   「嫌なあいつの顔を見ただけで、鳥肌が立つ」と、あるビジネスマンが話していました。寒くて、鳥肌が立つのは分かります。なぜ、嫌な奴を見た・・・という心理的な刺激で、生理的現象が起きるのでしょうか?

   鳥肌とは、皮膚の毛穴が縮まって、チキンスキン、鳥の毛をむしった後のようになることです。いわゆる「体温調整反射」の一つ。ストレスによる交感神経の緊張が背景にあり、怖い話や感動的音楽を聴いても、鳥肌は立ちます。脳は良いストレス、悪いストレスでも同様に反応するのです。

脳の進化を理解する

   このメカニズムを理解するには、脳の進化を理解してストレス対処をすることが必要です。我々の脳には扁桃体があります。情動反応や記憶の調整を行っており、脊椎動物にみられます。

   人類は、ジャングルで暮らしていた時、身を守るために、危険を察知すると、この扁桃体が反応し、その相手と「戦うか逃げるか(闘争逃走反応)」のエネルギーとなります。職場では猛獣のような危害はないとわかっていても、我々の古い脳は、反応してしまいます。この扁桃体は、「ワニや馬の脳」とも呼ばれ、たくましく生きていくための脳だと言えます。一方、この古い脳をコントロールするのが、前頭葉を中心とした理性の脳。

   現代のビジネスオフイスでは、猛獣に出くわすことはありません。しかし、職場にはいろいろな人間がいます。ライオンのように吠えまくる上司。アライグマのように手をすりすりしゴマする人。豹のように隙あらば、あなたを狙っている人などです。実際のジャングルと異なり、現代は襲われることはないのに、日常の人間関係のストレスが、古い脳である扁桃体に作用して闘争逃走反応が生じています。

   職場の人間関係を制するコツは、理性が「ワニの脳」の手綱をしっかり握ることです。次回は、実際にコントロールする方法について考えます。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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