学ぶべき2点の管理手法
「守・破・離」の精神で自分の型を押し付けることなく選手たちに自主性、主体性を持たせた育成をしつつも、圧倒的なコミュニケーション量で信頼関係を構築し何でも相談できる関係をベースにして、決して放し飼いにはしていない。「委譲」と「コミュニケーション」、その絶妙なバランスの上に立ったチーム・マネジメント。原監督の目覚ましい実績につなげた管理手法は、そう表現していいでしょう。
そこまで考えてみて、私が見てきた何人かの優れた経営者、すなわち社員に慕われ、部下育成に優れ、立派な後継者を早々に育て上げた方々と共通するものがまさにこの手法であったと、気がつかされました。一見「それまでしっかり握ってきたリードを自らの手から離し、メンバーに自主性、主体性を持たせ」つつ、「双方向のコミュニケーション量を確保することで、強固な関係を保つ」という、全く同じ「委譲」と「コミュニケーション」のバランス感覚が彼らにも共通するやり方だったのです。
「自分が先頭に立ってやらなくちゃ会社がダメになる」「部下には怖くてとても任せられない」という社長の意識が、人材が育つことを阻害し、次世代へのバトンタッチを遅らせている例は、大企業を含め枚挙に暇がありません。今年青山学院大学駅伝チームを常勝軍団にまで高めた原監督の管理手法から学ぶべきことは、「委譲」の決断と量を意識した双方向の「コミュニケーション」。今年は、この話を権限移譲、部下育成、後継問題等で悩まれる多くの経営者にお伝えしていきたいと思います。(大関暁夫)