近年問題化するケースが増えてきている「パワハラ」。悪質なものが明るみに出るのは必要なことだが、上司や先輩の立場からすると、指導する際「パワハラって言われてしまうかも・・・」とビクビクしてしまうこともあるのでは。
ネット上では、そんな指導者の側から「これってパワハラになるんでしょうか・・・」という相談が寄せられている。
「20万の40%」を「80万?いや9万?」
Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に、「分数のできない新卒社員に、算数ドリルをさせるのはパワハラでしょうか?」という相談が投稿された(2015年11月28日)。
中堅ゼネコンでリーダー職をしているという相談者。兄弟会社から転籍してきた新卒社員に積算を教えている際、「20万個で見積もっていた部材Aの量を40%にまで減らして再計算してみて」と言うと「計算器がないと分からない」と返事をされたそう。
改めて「20万の40%はわかるよね?」と聞くと「80万個ですか?」「だいたい9万個くらい?」と返され、「場の空気が冷えました」という(正解は8万個)。
百分率が苦手なのかと思った相談者は「40%というのは、40/100(100分の40)だよね?約分すると幾らになる?」と聞いたが、それにも「5ですか?」「いや4?」との返事で、「致命的に仕事にならない計算力だということが明らかに」。
そこで算数ドリル、という話なのだが、
「分数の計算は小~中学校レベルの基礎学力だと思うのですが、20歳も超えた社会人(しかも大卒)に算数ドリルを与えて暗算力を鍛えさせるのも、彼の尊厳を傷つけているような気もします」
という点で悩んでいるようだ。
渡すにしても配慮は必要か
回答者からは、
「仕事に必要な事で、出来ていなければ、研修やレクチャーとして問題は無いでしょう」
「強要するのでなく、必要性をある程度まで丁寧に説明したうえで命じれば、パワハラにはならないと思います」
と、「パワハラではない」とするコメントが多く書き込まれている。その一方で、
「他の社員の前でドリルを渡すのは、パワハラととらえられるかもしれないのでやめた方がいいでしょう。他人の前ではない所で、この業務にはそういった最低限の計算力が必要な事を言い含めて、帰って自習させるのが良いと思います」
「尊厳を守る配慮があるならパワハラとは受け取られないでしょうが、万全を期すなら、ドリルを渡すのは避け、少し手間でも問題を手作りしてそれを渡した方がいいです」
と、気を遣う必要はありそう、というアドバイスも寄せられている。
「あぁ~まるで自分に言われているかのような...」と、新卒社員の立場に近いという人からも、
「是非、ドリルさせてください。ただ、そのときに一緒に頑張っていきたいから、とか。期待しているから基礎はやっておいた方がいい、とか。意外に算数離れているとわからない人が多いからやり直すんだよ、と、クッションいれてあげて下さい」
と、相談者のやり方を勧める意見が投稿されている。
パワハラの6つの定義
ちなみに厚生労働省が定めるパワハラの6つの定義は、
「暴行・傷害(身体的な攻撃)」
「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」
「隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)」
「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)」
「業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)」
「私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)」
となっている。自身の指導がパワハラに当たるかどうか、判断がつかないという人は、最寄りの「総合労働相談コーナー」に相談してみるのもアリだ。(MM)