今日のテーマは「採用に強い企業」です。その前に、子どもの教育について。
小学生低学年になると、家のお手伝いをすることもあります。その際、最初は子どものやることですからうまく行きません。そこで、最初から親がやった方が早い、という理由から子どもに家事や料理の手伝いをさせない、ということも多いとか。
ところが、最初はともかく、慣れてくると子どもが家事や料理に慣れてきて親の負担も減ってきます。
何の話?
大丈夫、ちゃんと就活・採用の話につながります。
同じイベントでも明暗を分けたのは?
先日、大阪で開催された「就活ソニック」を見学してきました。これは、大阪労働協会主催の中小企業主体の業界研究イベントです。公的団体が主催するイベントとしては珍しく、3年生を主対象としたイベントでした。
参加企業数216社、参加者数は944人。動きが遅い17年卒のイベントにしてはよく集まったと思います。
ただし、中小企業主体のイベントにありがちなパターンはこのイベントでも健在。すなわち、学生が誰一人寄り付かないブースが多数というもの。
大阪労働協会主催のイベントは2015年11月16日開催の「OSAKAジョブフェア」も見学しました。
こちらは、大阪の池田泉州銀行お墨付きの中小企業100社が参加。要するに、優良企業ばかりなのですが、15時時点で学生がブースに寄り付かない企業は37社、1人のみが35社。4人以上の企業は6社のみ。17時の閉会直前になると、学生ゼロ・51社、1人・30社、4人以上・2社。
わかりにくい企業であっても、学生が集まっているところ
ま、こちらは、4年生・既卒者が中心のイベント。とは言え、12月の「就活ソニック」でも、事情はほぼ同じ。
12時時点(開場は11時)で学生ゼロ・86社、1人・68社、2人・30社、3人・21社、4人・5社、5人・3社、6人以上・3社。
4人以上集めている企業は、
・日用雑貨などがそれなりに有名...サラヤ
・企業名または親会社が有名...福井村田製作所、富士通システムズ・ウエスト
・扱っている商品・サービスが分からなくても、商品・サービスそのものが分かりやすい...羽衣マネキン、田代珈琲、コポ(靴下)、レック(結婚式場運営)、白ハト食品工業など
など、そもそも有利な状況にあったと言えます。
が、学生にとってわかりやすい企業がすべて有利だったか、と言えばそうではありません。
わかりにくい企業であっても、学生が集まっているところはありました。
繊維機器・不織布などのメーカー、金井重要工業も、そうした企業の一社。社長室長の金井宏輔さんがテンポよく説明して学生を集めていました。
実はこのイベント、通常のような学生が座れるスペースはなく、学生・企業双方が立って話すスタンディング方式でした。
しかし、金井さん、めげません。
「今日のようなブースの形式だと、学生も聞くのが負担。だから、説明を短く10分くらいで切り上げて、次々に呼び込むようにしないと」
金井さんとアシスタントの女性社員ともに20代、ということもあって学生は次々と金井重要工業のブースに入っていきました。
若手社員・女性を使うかどうか
この金井重要工業よりもさらに盛況だったのが、サンエースという塗料などを扱う専門商社(本社・神戸)。『ひょうご中小企業就活!ガイド2016』によると、従業員数128人、2012年度からの採用実績は9・11・8人、2016年度予定は8人。従業員数の規模の割に、と書いたら失礼ですが、採用者を増やしています。
このサンエースのブースを回していたのは、女性社員。学生があまりにも多く、私が名刺交換もできないほどひきつけていました。
金井重要工業やサンエースなど学生が集まる企業は、中小企業でも無名であっても共通している点があります。
それは、女性社員や若手社員をうまく使っている点です。学生からすれば、年代の近い若手社員がいれば話を聞きやすい、と思います。あるいは、話がしやすそう、と感じる女性社員についても同様です。
一方、学生ゼロの企業ブースを見ると、年齢が50~60代とおぼしき男性ばかり。おそらく、その企業の社長か役員、部長クラスというところでしょうか。
良く言えば、社会の荒波にもまれて勝ち上がってきた男、ということで渋い雰囲気の方ばかりです。
しかし、悪く言えば、社会経験のない学生からすれば怖そうな雰囲気の方ばかり。しかも、会場がスタンディング形式で企業側のみ椅子がある、という方式なので、余計に近寄りがたい雰囲気を醸し出していました。
若手・女性を使えない理由
若手・女性社員を使わない企業に話を聞くと、
「若手は経験不足で企業のことをわかっていない。女性は採用してもどうせすぐ辞めるし」
「うちは女性が中心の企業ではない。そもそも、営業経験などない女性社員を会社の顔である人事担当にすることなどできない」
などと話します。
せめて、アシスタントとして、女性の一般職社員を連れて行ってチラシでも配らせるだけでも違うはずなのですが、
「それは一般職社員がかわいそう」。
なんか、できない理由を必死に付けようとするだけで、合理的な発想というものがありません。
若手社員であれ、女性社員であれ、最初からうまく企業のことを学生に説明できる人など皆無でしょう。それはベテラン社員・管理職だって怪しいと思いますし。
最初ができないから、と言って、すべて役職者などが採用を担うだけでは、いつまでたってもうまく行きません。
特に中小企業の場合、黙っていても、半数近い確率で学生がほとんど寄り付かないのですから、だったら、数回の失敗など目をつむればいいはず。そこを割り切れる社はなかなかありません。
若手・女性社員でなくても寄り付く企業は何が違った?
実はこのイベント、若手・女性社員が主体ではない、学生にとってわかりにくい企業でも学生がそこそこ(あるいは相当)集まっている企業がありました。
たとえば、竹内電機(産業電機機械メーカー、本社・尼崎)。こちらは男性社員2人がサンタ帽をかぶって学生を集めていました。クリスマスイブ前日だから、ということもありますが、そこまでやっている企業はほとんどないため目立っていました。
有馬温泉旅館の御所坊グループは、他に参加したホテル・旅館の中では比較的学生を集めていました。ブースにいる男性は、和服。こちらも異彩を放っていました。
企業にとっての採用活動は、学生との関係が、「説明会参加まではお客様、内定・入社後は部下の社員、選考中はその中間、選考不通過後はまたお客様」という不思議なつながりになります。
お客様扱いをしすぎてもダメですし、と言って、部下に接するような気持でいると、それもまた敬遠されます。
ただ、少なくとも、説明会までは、お客様扱いか、それに近い感覚で接しないと、なかなか学生が集まらないのではないでしょうか。
同じ中小・無名企業でも、学生の集まり方の差を見てそんなことを考えました。(石渡嶺司)