先月(2015年12月)末、与党自民党の国会議員夫婦が育休を取得する予定である、というニュースが報じられ、賛否両論の大きな反響を呼んでいる。ちなみに筆者の個人的なスタンスは少々特殊で、育休取得自体に反対ではないけれども、一つだけ条件があるというものだ。
それは、育休取った以上は、それこそバッジをかける覚悟で、育休取得率の引き上げ等、女性の社会進出の促進に政治生命をかけろというものだ。いい機会なのでまとめておこう。
「範を示す」の誤解
まず今回の話を聞いて、筆者は昔のある経験を思い出していた。ある会社がワークライフバランスの促進(広い意味で育休取得促進も含まれる)を重点的に進めることを決め、『ワークライフバランス担当役員』も任命され、筆者も仕事としていくつかアドバイスをすることとなった。
で、その責任者がイの一番に何をしたかというと「ワークライフバランスの重要性について、身をもって範を示したい」ということで、2週間の夏季休暇を取得してしまったのだ。トップから新人まで社内中ビックリである。確かに筆者自身、そういうことを言った覚えもある。
でも、それは「休職がキャリアの挽回不能なマイナスにならないよう、年功給から役割給に切り替える」「労働時間ではなく成果で評価する仕組みを導入する」「3期連続A以上的な積み上げ式の昇格要件を緩和する」といった、要するに脱年功序列の人事制度に切り替え、組織内の流動性を高める一連の改革プランの最後に、それっぽいことを付け加えただけだ。
「範を示す」というのは一見自己犠牲的で聞こえはいいけれども、それは要するに「もうやることはすべてやったが、おまえら根性無しだからワシがお手本を見せてやろう」といってボールを丸投げする行為であり、いろいろな手を打った後で打つべき手だと筆者は思う。安倍総理が「女性の活躍しやすい社会」を打ち出してはや3年。果たして与党である自民党は十分な改革を実行したのだろうか。
「今年こそは本気出すつもりです」って万年ニートみたいなこというのであれば別に構わない。だったら、その本気とやらを確実に見せてほしい。以上が、育休取ってもいいけどこれからは政治生命を賭してこの問題に取り組んでほしい、と筆者が条件をつける「理由その1」である。