除夜の鐘とともに「他人を許す」 「心のクセ」をリセットしよう

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   皆さん、「年の瀬」ですね。今年1年いかがでしたか?

   過去の経験が役に立たず、恐怖や先行き不安が多くなる時代です。「10年後、あなたの仕事は残っていますか?」「その仕事、人工知能に取って代わられます」といった情報の本があふれていますね。

   そんな「ハイパーチェンジ時代」への対処法である「コーピング」を身につけることこそ、「職場ストレス攻略法」の第一歩なのです。コーピングとは「ストレスへ対処すること」を言います。

ストレス攻略法は「孫子の兵法」に学ぶ

除夜の鐘を聞きながら・・・
除夜の鐘を聞きながら・・・

   環境に問題があれば改善します。これを問題焦点型コーピングと言います。受け止め方に問題があれば改善します。これを情動焦点型コーピングと言います。これには個人差がありますから、自分に合ったストレスの対処法、すなわちコーピングを身に着けることこそ重要になってきます。

   孫子は「敵を知り己を知らば百戦危うからず」と説きました。ここは現代のメンタルヘルスにも応用可能です。

   ベストセラー『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ケリー・マクゴニガル著、大和書房)でも、繰り返し強調されているのが「思い込み」です。

   上司に「おはよう」と挨拶したら返事がなかった。「嫌われている」のでは、と思います。本当でしょうか?たまたま忙しかったのかもしれませんよね。

   状況を、「事実を正しく把握(敵を知る)する努力」(コーピング)が必要になります。

   もう一つは「己を知ること」です。わかりやすく言うと「心のクセ」です。ストレス状態になると「暴飲暴食」「過度な心配」などありませんか?

   仕事で疲れて、休む必要があるのに、脳が興奮しているため、過度なアルコール摂取や深夜までのカラオケ等は、場合によっては、逆効果になる場合もあります。

   また、現代のストレスは脳の疲労と無関係ではありません。脳内神経伝達ホルモンのためには、十分な栄養の補給と適度な運動が必要になります。

エリートがしていること「受け止め方を変えること」

   これまで長い間、30万人もの人を対象にストレス調査をしてきました。その中で、「成果を上げている経営者」に、少数ですが、インタビュー調査をしました。毎日多忙で激務の人々です。そのストレスチェックの結果は「さぞやストレスが多い」という予想とは真逆でした。対象になった経営者は「良好」な結果でした。

   この経営者たちは、ストレスに対する認知が異なっていました。通常、脅威や不安と認知されるようなことでも「ストレスは自分をさらに成長させるチャンスだ」と捉えていました。

   当然、私たちは嫌なことをされると、その相手を許せなくなります。職場で顔を見るたびにムラムラとストレスが湧いてきます。

人と仕事を愛すること

   インドの哲学者で政治指導者でもあったマハトマ・ガンジーは、「弱い者は、他人を許すことができない。許すことができるのは強い者の証だ」と述べています。セリエ博士は、ストレスは適応のための「エネルギー」で、悪いストレスを良いストレスに変えていく秘訣は「人と仕事を愛することだ」と言います。

   除夜の鐘とともに「他人を許す」清算をし、「強きセルフ」増強の新年を迎えることも「職場ストレス攻略」の第一歩になるかもしれません。

   良いお年をお迎えください。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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