「下町ロケット」見て鼻息荒い経営者 「メインバンク替えてやる!」の落とし穴

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銀行取引の裏セオリー

   なぜこうなってしまうのか。そもそも、メガバンクはその成り立ちからして大手企業のための金融機関なのです。中小企業はあくまで補助的収益源。借入残高10億円以下の企業は、主要顧客ではないのです。一方の地銀や信用金庫といった地域金融機関は、どんな小さな企業でも地元企業の発展協力を通じて地域経済の活性化支援をするのがその使命です。メガバンクとは、中小企業取引の目的もスタンスも違うのです。要は、同じ銀行でも役割が違う。もちろん全部が全部、H社のようなケースになるとは言えませんが、銀行取引の裏セオリーとして覚えておいて損はない話です。

   冒頭のR社社長には、その場でこうアドバイスしました。

「銀行がうるさく言うというのは、御社をよく見てくれている証拠でしょう。私の経験からは、むしろ安心だと思いますよ。御社のことをよく分かってくれていない方が、よっぽど怖い。それと、銀行の支店長なんて2年も我慢すれば交代しますから、取引見直しはそれから考えても遅くはないでしょう。企業の話も銀行の話も、ドラマはどこまでもドラマです。佃航平社長の銀行対応はストーリー上では爽快ですが、元銀行員の私から見れば明らかに間違っていますよ」

   社長は意外そうな顔をしていましたが、私の話を聞いて、恐らく早まったことはしないだろうと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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