「最近の若手社員は元気がない」――こんな嘆きがしばしば聞かれるようになって久しいが、このほど、日本の若手のチャレンジ精神は世界最低ランクという調査結果が報じられ、注目を集めている。
このような結果を招いた原因は、若者自身にあるのか、それとも日本の社会や会社の閉鎖的風潮なのか・・・。
「すっかり委縮している」
「ニューズウィーク日本版」のサイトに、「世界一『チャレンジしない』日本の20代」という、センセーショナルな見出しの記事が公開された(2015年12月1日)。 武蔵野大学講師の舞田敏彦氏が、各国の研究者が実施する「世界価値観調査」2010~14年の結果を分析。
それによると、「新しいアイディアを思いつき、クリエーティブであることを大切にしている」に自分が当てはまると考える20代は、日本が50.9%だったのに対し米国では73.2%。「冒険してリスクを冒すこと、刺激のある生活を大切にしている」では日本が23.1%に対し米国が55.8%と、いずれも大きく差を付けられている。
さらに59か国の中で見ても、日本はどちらも圧倒的に低くなっている。舞田氏は「日本の若者は、すっかり委縮している。社会的な統制が強いはずの旧共産圏以上だ」と嘆く。
一方で「クリエーティブな人材が欲しいと言いながら、斬新なことを提案したり、商談でイニシアチブを取ったりする若手を『生意気だ』と言って排除していないだろうか」「冒険志向の低さは,失敗(道草)に寛容ではない日本社会の思想を反映している」と、企業や日本社会にも問題が大いにあるとも指摘している。
成功すれば出る杭を一斉に叩きまくる
この記事に対し、ツイッターなどでは
「日本はチャレンジして失敗すれば袋だたきにし、成功すれば出る杭を一斉に叩きまくる社会ですからね。頭のねじが1、2本飛んでいるタイプでないとチャレンジなんかできませんよ」
「チャレンジをしたくない、と思わせる土壌を作った側に問題。『チャレンジしてくれ。但し失敗してもケアはしないから自己責任で』って状態で、好き好んでチャレンジする人がどれだけ多いのか」
「『挑戦』してる大人も圧倒的に少ないから、システムに迎合すれば安泰って思っちゃう」
と、やはり若者自身の資質よりも、日本社会や企業に原因がある、と指摘する声が多い。
チャレンジ精神を引き出す方法
若手のチャレンジ精神を引き出すには企業の意識改革が重要なポイントとなりそうだが、具体的にはどうすべきなのか。
社員研修・人材開発の情報サイト「PHP人材開発」では、PHP研究所 研修企画部部長の的場正晃氏が「適切な目標設定によるチャレンジ精神の醸成」を説いている(13年12月2日)。
目標には、大きく分けて
「(1)当たり前レベルの目標(当人の職位、資格としては普通にこなせるレベルであり、支障なく円滑にこなすことのできるもの。達成しても、他者からみれば『当たり前』の範囲の目標)」
「(2)満足レベルの目標(職位、資格としては達成が難しく、挑戦することに躊躇を覚えるレベルのもの。達成すると、当人および関連する人々に満足を与えるような目標)」
「(3)感動レベルの目標(職位、資格としては極めて難しいレベルにあり、誰もが達成困難と考えて挑戦を控えるようなテーマ。それだけに、達成した場合は社内外に劇的な変化と感動を与える目標)」
の3種類がある。世間一般では(1)もしくは「(1)と(2)の中間」に位置する目標が設定されることが多いという。
これでは組織全体の活力が失われるとして、
「評価制度も減点主義ではなく加点主義で、失敗を恐れずチャレンジする態度が評価される仕組みを整えておくことが大切です」
などと指摘している。(MM)