「融通の利かない」就活生 採用担当「あ然」の行動様式

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   今日のテーマは「融通」です。

   就活では学生の想像以上に企業側は融通を利かせてくれます。 説明会で満席表示が出ていても、電話をかけるダメ元学生がどうにかなることは以前の回でお伝えしました。

   選考についても同様です。もし、企業側の提示した日程に学生が合わない場合、それを伝えれば多くの企業は学生の都合に合わせて再提示をします。

最優先課題は優秀な人材を獲得すること

「直通」がなければ、ないで・・・
「直通」がなければ、ないで・・・

   学生からすれば、

「わざわざ企業が提示した日程を学生が断るなんて、相手の面子もあるだろうから無理」

と考えてしまうようです。

   それが可能となるのは単に企業側・採用担当者が親切、というだけではありません。企業からすれば、最優先課題は自社にとって優秀な人材を獲得することです。そのために日程変更が必要なら、いくらでも変更します。面子がどうこう、などと考える社会人はまずいません。

   これは内定後も同様です。

   もし、内定学生が不安に思うようであれば、先輩社員に会う機会をセッティングします。採用担当者からすれば、学生には納得づくで入社して頑張ってもらいたいからです。

融通が利かない学生は「ゼミ、部活推し」

   一方、学生はこうした融通が就活中もなかなか利きません。もちろん、社会経験が少ない、という事情もありますが、融通の利かない学生は10年前より今の方が多いのではないでしょうか。

   融通が利かない学生の特徴は「ともかく最初の約束を押し通す」点にあります。

   ゼミがあれば、ゼミを最優先。講義があれば、講義を最優先。部活があれば部活を、アルバイトがあればアルバイトを、それぞれ最優先します。

   最初の約束を守ろうとするのは、いいことです。それに大学生であれば大学の勉強が最優先です。

   しかし、次のケースはどうでしょうか。

   ●ゼミ

   学生A「ゼミ論文の中間発表日。ゼミ教員だけでなく、他のゼミ教員やOBも来て、色々とツッコまれるのが恒例」

   学生B「ゼミ合宿の打ち合わせ日。買い出し係などを決める」

   ●部活

   学生A「大会前の全体練習最終日。練習試合をして連携などを確認する」

   学生B「通常練習の日でランニングなどをするだけ」

   ●アルバイト

   学生A「年に2回のセールの日。アルバイトが一番出てくる日で、本部からも応援の社員が来るほど忙しい」

   学生B「通常のシフト日。シフトの代替要員を探そうと思えば探せる」

   いかがでしょうか。それぞれ、学生Aは、就活よりも本来の予定を優先した方が良さそうです。一方、学生Bは、就活に比べて優先しなければならないかどうか、疑問の出るところです。

「部活でメシが食えるのか」のツッコミ

   採用担当者からも、融通の利かない学生には疑問が噴出しています。

「社の役員と食事会をセッティングしたら、『ゼミの飲み会があるから』と言われてかなり脱力した。そりゃ、こちらの都合でセッティングしたとは言え、役員がゼミ友達に負けたかと思うと」
「体育会系のアホな学生ほど、部活部活、と言います。それも試合ならまだしも、通常練習、それも単なるランニングですよ。そんなの1人でやって、就活を優先すればいいのに。『君ら部活、部活と言うけど、じゃあ、その部活でメシが食えるか?選手になれるか?なれるのであれば部活を最優先しろ。そうでなければ部活と就活、どっちが大事か、よく考えろ』こう話すと、体育会系の学生はみな黙ってしまいます」

完全さより不完全さ、バス停探しのように

   就活にしろ、その後の社会人生活にしろ、100%満足する、ということはまずありません。

   しかも、予定はどんどん重なっていきます。優先すべき予定が同時に重なる、ということも珍しくないのです。

   そのとき、どちらを優先するか。あるいは、どのように調整するか。その人の手腕が問われます。

   バスに例えれば、社会は常に直行便だけではありません。近くを通るバス、目的地まで行くけど本数の少ないバスなど様々です。目的地に行くバスがなくても、乗り継いで行く。あるいは、目的地近くの便に乗って、そこから歩いていく。様々な手段があるはず。

   就活イベントと学生生活の調整も同じです。

   この間、私が主催メンバーだった首都圏就活交流会には、開始時間から大きく遅れて参加した学生がいました。

   彼は事前に遅れてくる旨、伝えてきて、結局、会に参加できたのは1時間程度。話を聞くと、

「近くで別の企業の会社説明会をやっていたので参加した。でも、こちらも面白そうだったので」

   とのこと。空いた時間を無駄にしない、融通を利かせる、という点でこの学生は評価できます。

   融通を利かせる、最優先課題は何か考える、それを普段から意識しているかどうかでも就活では大きな差が出てしまいます。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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