先日、公益財団法人 日本漢字能力検定協会が公表した「2015年 今年の漢字」は「安」でした。「安保」法案に国民の関心が集まったこと、世界各国で起きたテロが、人々を「不安」に陥れたこと、マンションの偽装問題などから、人々が社会に「安心」を求める心が表現されているそうです。
その「今年の漢字」、キャリア女性たちにとっては「安」ではなく「乱」や「変」――との調査結果が、転職支援を手がけるLiB(本社・東京)の調査でわかりました。同社では、「過去の最高到達年収400万円以上」の女性を対象に、「働く女性から見た2015年の重大ニュース」アンケートを実施(有効回答数 117 人、2015年12月17日公表)。なぜ、今年は「乱」なのか。結果からは、キャリアを積んできた女性たちが、現代社会を見る「目」が、伺えます。
乱や変、動が目立つ
キャリア女性を対象に「2015 年のニュースの中で最も重大だと思ったニュース」について質問したところ、1位は「パリ中心部連続テロ事件」、2位は「マイナンバー法施行」、3位が「日本人拘束殺害事件」、4位以下は「三井不動産基礎工事データ改竄」、「太平洋を囲む巨大経済圏(TPP協定)誕生」となりました。グローバルに働く女性も多いからか、国内だけでなく、海外、国際経済など、幅広いニュースに関心が寄せられています。
コメントでは、過激派組織「イスラム国」について、「SNSのあり方についてまで(議論が)波及した(36~40歳 契約社員)」とか、マイナンバー法について、「企業の体制が追いついてないのに、一元管理を進めている。自分の情報が手軽に出せるのは便利だが、安全なのか(31~35歳 正社員)」、TPPについては「今後の社会の方針が大きく変わりそう(31~35歳 正社員)などの声が寄せられました。ニュースを「世界の遠い国で起きていること」ではなく、「自分ごと」として捉えた女性も多かったのでしょう。
そんなキャリア女性を対象に、「2015年を漢字1文字で表すと何か」と聞いたところ、「乱」や「変」「動」などの回答が目立ちました。これらの漢字を挙げた人の多くが重大ニュースとして「パリ中心部連続テロ事件」を上げており、「乱」や「変」は国際的な治安の乱れを、イメージしたものかもしれません。「動」もまた、国内政治のめまぐるしい動きや、女性にとってリアルな話題では「希望出生率」の設定など、様々な「動き」があったことを象徴しているようです。
パリがすごいことになっていた
先日、欧州に長期出張している、同世代の友人が一時帰国したので、お茶をしました。やはりテロの影響は大きかったといいます。
「夜中、仕事から帰ってきたら、パリがすごいことになっていた」「会社からは『自宅から出ないように』と言われたし、帰国前に国境が封鎖され、一時はどうなるかと思った」。彼女がいたのはフランスではありませんが、これまで警備が万全だと思われていたパリだけに、衝撃も大きかったとか。
「自分の滞在国でも検閲が増えるのかな」と感じ、様々な国籍の人が入り「乱」れる欧州の今後について、思いを巡らせたそうです。日本人女性である彼女もまた、欧州では「マイノリティ」。文化の多様性とどう向き合うのか、もやもやしながらも、自分のキャリアをしっかり考えているようでした。
キャリア女性たちが選んだ、今年の漢字「乱」。社会が大きく変わろうとしていることを不安に感じつつ、目の前のキャリアと地道に向き合っていこう――そんな心象が伺えるような「乱」でした。(北条かや)