今年もあと1か月弱となりました。1年を振り返り、「色々なことがあったなぁ・・・」と、感慨深くなる人も多いのではないでしょうか。中には、仕事でミスをしたり、人間関係のトラブルにあったりして、落ち込んだ人も、いるかもしれません。
そんなふうに気分が凹んだ時は、人生の「大先輩」に、話を聞いてみるのはいかがでしょうか。
地元で見つけた分厚い「女性史」
この夏、筆者は、たまに出演している朝のニュース番組「モーニングCROSS」(TOKYO MX)で、「女性の戦争参加」について取り上げました。女性たちが戦時中、いかに主体的に戦争に巻き込まれていったかを、当時の写真などの資料をもとに解説したのです。その際、地元の石川県で祖父母に話を聞いたところ、今から20年以上前に、地元の女性有志が集まって編纂した、『石川の女性史』という、分厚い歴史書を見せてもらいました(「石川県各種女性団体連絡協議会」発行)。編纂には、祖母もすこし関わったようです。
その本は、明治期から第2次世界大戦中にかけて、石川県の女性たちがどのような生活をしていたかを物語る資料の宝庫でした。「大日本国防婦人会」という団体の石川支部に、多くの女性たちが加入し、募金活動や戦争映画の上映など、「銃後の守り」の役割を果たしたこと、女学生たちが軍需工場に駆りだされたこと。それぞれの女性たちの実像が、当時の卒業アルバムや新聞投書などから、詳細に描かれていたのです。自分の地元で、20年以上前に、これだけ丁寧な調査を行い、歴史書にまとめた女性たちがいる。資料の写真をぜひ、テレビで紹介したいと思いました。
写真の使用許可を取るため、番組ディレクターの方が、著作者の「石川県各種女性団体連絡協議会」の代表の方に、連絡を取ってくださったところ・・・その方は、祖母の親しい知人でした。70歳ほどになるその女性、K子さんは、「◯◯(祖母の名前)のお孫さん、ぜひ連絡を下さい」と、電話番号を教えてくださったのです。早速かけてみたところ、受話器ごしに「こんにちは~! こんな昔の本を見つけて下さって、ありがとう! びっくりしたわ!」と、元気な声が・・・。
人生の大先輩のひとことが響いた
「こちらこそ、急にご連絡してしまい、すみません」と謝りつつ、筆者が「女性の『銃後の守り』の歴史」に興味があり、ぜひテレビで紹介したいと思っていることを伝えると、K子さんは言いました。
「あなたのような若い女性が、そうやって戦争の歴史に興味を持ってくれるのは本当に嬉しいわ。今の時代、戦争問題にかぎらず、『おかしいな』と思っても、声をあげない、静かな人が多い気がする。私たちお年寄りだってそうよ。男性もそう。だからね、女性がもっと元気にならなきゃいけない気がするの」
70代になる、K子さんは続けます。
「私も老齢の親の介護なんかで、色々大変よ。でも、それに負けて、うじうじしてもダメだと思っているの。あなたも東京で働いて、大変なことがあるでしょうけれど、頑張って、おかしいなと思ったら声をあげるのよ。若い人に、私は期待しているわ」
明るく励ましてくださった、K子さん。思わぬ所でできた、人生の大先輩とのご縁に、なんだかじわじわと力が湧いてきたのでした。政府が掲げる「女性の活躍推進」というスローガンよりも、何よりも、戦後を生きてきた、人生の大先輩の「頑張ってね」というひとことが、筆者には響いたのです。「おかしいと思ったら声をあげる」。前向きに頑張ればいいんだと思えました。働く女性にとっては、もしかして、同僚や先輩だけでなく、年の離れた人生の大先輩と話すことが、時にはエンパワメントになるのかもしれない。筆者はそう思います。(北条かや)