「社内人脈」は本当にプラスか 「疎ましい」存在になる可能性も

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   人脈の1つとして社内人脈が注目されるようになりました。仕事の幅を広げ、キャリアを広げるために上司や先輩同僚たち「タテ」×「ヨコ」人脈のつくり方を紹介する記事をみかけますね。転職するより、長く勤務して活躍したい人が増えてきたことも社内人脈を求める背景かもしれません。取材していくと多くの企業で退職率が低い状態のまま。これだけ有効求人倍率があがれば、転職して給与をあげようと考える人が増えても当然な状態。ところが、

「せっかく慣れた職場を変える気にはなれません」

   と転職は否定的な意見が大多数。ちなみに、リクルートキャリアによるリクナビ2016の会員の大学生(2016年4月入社予定)のアンケートによると、「入社直後の給与は低いが、長く働き続けることで後々高い給与をもらえるようになる」「歴史や伝統がある企業である」が人気。長く勤務したい意向はさらに増えていきそうです。なので、社内人脈が注目されるのでしょう。

そこにかけるエネルギーを考えると・・・

社内人脈開拓も結構だが・・・
社内人脈開拓も結構だが・・・

   仕事をする上で、社内の人脈が広いことはとても良いことです。例えば「この件は誰に聞いたらわかるだろう?」という場面で、すぐに別の営業所に電話をして「俺の取引先の同業他社の会社をお前が担当していると思うけど、最近、業績どうなの?」と聞けたり、「経営会議に資料を作って出したいんだけど、役員はどう思うかな?」となったら、秘書室に問い合わせてみたり。人脈があれば、いろいろなことを自分で直接聞くことができます。その点で、人脈が広いことはとても意味があります。

   では、社内人脈の広さは社内の評価に影響するのでしょうか?取材していると「同期とよく飲んでいます」とアピールしたり、「社内の人間はだいたい知ってます」「この仕事は誰に聞けばいいのか、俺ならわかるよ」と自慢したりしている人に、残念ながら人事評価の高い人は意外といません。人脈を持っていることは重要ですが、そこにかけるエネルギーを考えてみてください。「社内人脈に詳しい人」と思われるためにエネルギーを注ぐのと、そのエネルギーで仕事をするのと、どちらがいいのか。

最後に支持されるタイプは?

   社外から本当に重要な仕事を持ってきて、社内の会議に通すことになった時、たとえ自分に社内人脈が無かったとしても、社内情報(人脈含む)に詳しい人を知っていれば十分なのです。

   世の中は長いものに巻かれる傾向があります。社内人脈は広くても仕事ができない人と、社内人脈は狭いが仕事のできる人がいたとしたら、最後はどちらが支持されるのか?仕事をスムーズに行なうために、社内人脈を活用することはとても重要ですが、そこに対してむやみにエネルギーをかけすぎてしまうことは、時間がもったいないと言わざるを得ません。

   また、私がさまざまな人に会った上で実感しているのは、本社にいて「役員をよく知っている」とか「社内の政治をよく知っている」「派閥に詳しい」という人は、経営陣から見ると「知りすぎた存在」と言えます。そういう人は、ある一定の役目が終わると、「あとは大阪に行って勉強してこい」などと、どこかに飛ばされるのが常です。このように、社内人脈に精通しすぎてしまうと、時と場合によっては「面倒くさい」「疎ましい」「遠ざけたい」存在になる可能性も大。

   歴史を振り返ってみても、将軍や大名の下で知り尽くした存在は、どうなったでしょうか?石田三成は豊臣秀吉が見いだした「優秀」な人物でしたが、あまりにも豊臣政権の動かし方を知りすぎていた。秀吉亡き後、天下取りにおいて対立相手だった徳川家康に滅ぼされました。知りすぎた人というのは、そういったリスクを背負っているのです。知らなくていいとは言いませんが、知りすぎていたり、知ることにエネルギーをかけすぎてしまったりすると、結果としてプラスにならないでしょう。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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